来週の金融市場見通し(2019年6月10日~2019年6月14日)

■来週の見通し

移民流入の問題をめぐり、米国とメキシコが協議を続けていますが、合意できなければ、10日に5%の関税が発動されます。「メキシコの対応次第で短期間で撤回される公算が大きい」との見方がありますが、注意は必要です。他方、日米貿易交渉の閣僚協議は13日の予定。米国の通商政策に加え、米中の小売売上高や消費者物価指数、日本の国内総生産(GDP)改定値など、内外の経済指標も確認したいところです。

◆株価 : 方向感を欠く展開か

日本株は、方向感を欠く展開が予想されます。米中の貿易摩擦については、今月末のG20(20か国・地域)サミットまでは手詰まり感が続きそうです。また、米国とメキシコの関税・移民問題に関しても、不透明感が払しょくできない状況です。ただ、米国の利下げ期待が米国や日本の株価を支えるとみられる上、日本株の場合、他国と比べても割安感が強まっています。そのため日経平均株価は、一時2万1千円台に乗せる場面もありそうです。

◆長期金利 : マイナス圏で居所を探る

米連邦準備制度理事会(FRB)が早期に利下げに踏み切るとの観測や、米国がメキシコからの全輸入品に関税を課すとの警戒感などから、米長期金利が1年9か月ぶりの水準に低下する中、国内の長期金利は一時マイナス0.135%と、2016年8月以来の水準まで低下しました。欧州中央銀行(ECB)についても利下げ観測がくすぶる中、国内の金利は上昇しにくい状況。日銀が一段の国債買入れオペの減額に動くと、低下一服となる可能性も。

◆為替 : ドル円上値は重い

米中通商協議が暗礁に乗り上げる中、移民問題に絡めた米国によるメキシコへの輸入関税問題が浮上、ドルの上値を押さえます。一方で米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長が「利下げの可能性を排除せず」として、米国の利下げ期待から世界的に株価が戻しています。しかし依然懸念材料は多く、リスク回避の円買いが出やすい状況に変化はありません。来週もドル円の上値は重く、レンジ内での弱含み推移を想定しています。

◆Jリート : 1,900ポイント台で値固めか

東証REIT指数は、週半ばまでは利益確定売りに押され1,900ポイントを一時下回ったものの、日米金利が低下する中、分配金利回りの高さに着目した買いから持ち直し。週末は株価上昇で投資家心理が改善し、堅調な動きが継続しました。5月末の東京都心のオフィス空室率は低下、平均賃料は65か月連続で上昇し、オフィス市況は堅調。長期金利がマイナス0.10%を下回って推移する中、Jリート市場は高値圏での底堅い動きが見込まれます。

来週の注目点

景気ウォッチャー調査(5月) 6月10日(月)午後2時発表 

景気ウォッチャー調査の現状判断DI(季節調整値)は、4月に前月比0.5ポイント上昇の45.3となりました。5月の大型連休を控えた受注増などに支えられた模様です。

ただ、大型連休に伴う消費増については、その反動が見込まれます。また、所得の伸びが鈍い中で10月に消費税増税が予定されていることから、消費を手控える動きもみられます。さらに、米中貿易摩擦の激化なども足元の景況感を圧迫しています。そのため5月の現状判断DIは、家計動向関連、企業動向関連ともに、前月比低下が見込まれます。

米消費者物価指数(5月) 6月12日(水)午後9時30分発表

米国の消費者物価指数(CPI)は、4月に総合で前年比2.0%上昇と市場予想をやや下回り、食品とエネルギーを除くコアCPIは前年比2.1%の上昇と市場予想通りとなりました。足元、コアCPIでは被服が2か月連続で大幅なマイナスになるとともに中古車は-1.3%と昨年9月以来の大幅なマイナスとなっています。

失業率が歴史的な低水準にあり、賃金は年3%程度の伸びを維持しているものの、4月の個人消費支出(PCE)価格指数が1.5%上昇と低迷しており、今後のインフレ動向をみるうえで当該指標は要注目です。5月は総合CPIで前年比1.9%、コアで同2.1%程度の伸びを想定しています。

 

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