11月22日妥当レンジ 21,200円~23,000円
米中首脳会談を控えて動き難い展開

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

 

<OECDが世界経済見通しを引下げ>
■21日に経済協力開発機構(OECD)が発表した世界経済見通しにおいて、2019年の実施GDP成長率は、9月時点の+3.7%から+3.5%に引き下げられた。貿易の鈍化と先進国の金融政策引締めが背景である。米中貿易摩擦の影響に加えて、新興国、英ブレグジット、中東などもリスク要因として指摘されている。
■米国の経済指標に力強さが見られなくなりつつある。不動産関連指標は、10月の着工許可件数(20日発表)が前月比0.6%減少、着工件数(同)は前月比+1.5%とほぼ市場予想と同じであったが、直近のピークだった本年1月を8%下回る水準。10月の中古住宅販売件数(21日)は前月比+1.4%と7ヵ月ぶりの増加であるが、前年同月比では▲5.1%であった。また、10月の米国耐久財受注額は前月比▲4.4%と2ヵ月連続の減少。
■欧州も変調が現れつつある。11月のユーロ圏PMI総合指数(26日)は、前月から0.7ポイント低下して52.4。ドイツとフランスの製造業・サービス業が前月から低下している。欧州連合(EU)は25日に英国の離脱案を正式決定したが、12月中にも英国議会の承認という難関が待ち受けている。
■今週は、30日(~12/1)開催の20カ国・地域(G20)首脳会議に合わせて行われる米中首脳会談にもっとも注目が集まる。トランプ大統領は部分的に妥協するとの見方もあるが、米通商代表部(USTR)は20日に発表した報告書において、「中国の不公正な行動は根本的に変わっていない」と批判を強めている。パウエルFRB議長講演(28日)、11月の中国製造業PMI(30日)も注目点である。

 

<「コンセンサスDI」 は5週連続で全期間50%割れ>
■「IFIS/TIWコンセンサス225」は、5週連続で全期間で前週比マイナス。「コンセンサスDI」(前週比プラス企業とマイナス企業の比率)も、5週連続で全期間で50%割れだった。ただし、2Q決算を経過したことから年内は大きな変化は生じないと考える。米中首脳会談において対立に緩和的な要素が見られれば一時的には上方に反応する可能性もあるが、下方トレンドの中での反発に過ぎないと考える。

 

 

 

◇日経平均妥当水準(レンジ)

21,200円~23,000 (前回21,400円~23,100円)

*「IFIS/TIWコンセンサス225」(11月22日)来期予想ベースEPSをもとに算出

◇IFIS/TIWコンセンサス225(11月22日)

今期予想EPS 1393.42 (前週 1394.62円)
来期予想EPS 1456.78 (前週 1559.95円)
再来期予想EPS 1578.12 (前週 1600.92円)
今期予想PER 15.53 (前週 15.55倍)
来期予想PER 14.86 (前週 13.90倍)
再来期予想PER 13.72 (前週 13.54倍)
来期予想PBR 1.08 (前週 1.08倍)
来期予想ROE 7.25% 前週 7.75%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
6.99% (前週 7.47%)

11月22日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出

 



 


図1
G20
を控えて今週は動き難い展開。




図2
来期予想ベースのプラス企業比率は、 
49.538.344.142.649.6
再来期予想ベースのプラス企業比率は、45.242.443.938.048.1
5週連続で50%割れだが、2Q決算発表が一巡したことから、目先的には変化の方向感が出ない可能性も。

[注:4~5月は例年、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]
 

 

 

出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2014年1月から表示

 

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り

 

株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。