9月14日妥当レンジ 22,900円~24,800円
政治の季節によるチキンレースが始まった?!
【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】
<中国に対する制裁関税第3弾発動へ>
■先週の日経平均株価は、週末比で787円高と大きく反発し、23,000円台を奪還した。これは、1)トルコ中央銀行が市場予想を上回る利上げを行ったことによる新興国に対する懸念の後退(13日)、2)ムニューシン財務長官など米高官が、中国側に米中貿易について協議を呼び掛けていたという報道(12日)、3)14日発表の中国経済指標が悪くなかったこと、などから市場リスクが後退したこと、米長期金利が3%台をつけたことなどから円安に振れたことが株価の押上に繋がった。
■しかし、現実的にはリスクが消失したわけではない。1)トランプ政権は制裁関税の第3弾となる2,000億ドル相当の中国からの輸入品に対し、10%の追加関税を24日から発動することを発表した(17日)。2)トルコでは10月に米国人牧師の次回公判が予定されており、米国との緊張関係は変わらない。3)中国経済指標は表面的には堅調であるが、8月は猛暑や原油高の特殊要因があったことに加えて、米国向け輸出の前倒しが寄与した可能性も指摘される。
■トランプ陣営のマナフォート被告が司法取引を交わしてモラー特別検察官に協力することが報じられた(14日)。トランプ政権は中間選挙を前にスキャンダルが噴出しており、支持率が低下している。そのために一段と対外強硬策を推し進める可能性も出てきている。21日に予定されている日米貿易協議(FFR)は要警戒である。
<「コンセンサスDI」は3週連続で来期・再来期50%割れ!>
■「IFIS/TIWコンセンサス225」は、先週同様に前週比で今期はプラスであったが、来期・再来期はマイナス。「コンセンサスDI」(前週比プラス企業とマイナス企業の比率)は、今期はイーブン(50%)であったが、来期・再来期は3週連続で50%を下回った。長期業績見通しはマイナス・トレンド入りした可能性がある。円安と割安感、消去法的選択を理由に強気論が優勢を占める可能性もあるものの、中国経済の減速、米国の強硬な対日要求が顕在化する可能性、英国ブレグジットの合意無き離脱の可能性、等々、リスク要因は多い。騰勢は一時的なものとの前提での対応が求められよう。
◇日経平均妥当水準(レンジ)
22,900円~24,800円 | (前回22,500円~24,300円) |
*「IFIS/TIWコンセンサス225」(9月14日)来期予想ベースEPSをもとに算出
◇IFIS/TIWコンセンサス225(9月14日)
今期予想EPS | 1403.25円 | (前週 1398.07円) |
来期予想EPS | 1589.37円 | (前週 1586.27円) |
再来期予想EPS | 1628.85円 | (前週 1634.53円) |
今期予想PER | 16.46倍 | (前週 15.96倍) |
来期予想PER | 14.56倍 | (前週 14.04倍) |
再来期予想PER | 14.18倍 | (前週 13.65倍) |
来期予想PBR | 1.16倍 | (前週 1.12倍) |
来期予想ROE | 7.98% | (前週 8.00%) |
来期予想 インプライド・リスク・プレミアム |
7.64% | (前週 7.74%) |
9月14日 日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出
予想PER(12ヵ月フォワード)では依然として割安感が強いものの、現在の株価上昇は、テクニカル的な側面が強いと考える。
来期予想ベースのプラス企業比率は、 55.2%→50.0%→48.3%→47.6%→44.0%。
再来期予想ベースのプラス企業比率は、60.7%→52.0%→49.3.0%→45.7%→44.4%。
23週連続で50%割れ、来期以降の見通しは下方トレンド入りした可能性が強まった。
[注:4~5月は例年、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]
出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2014年1月から表示
「IFIS/TIWコンセンサス225」について IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。 理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。 4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。 〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕 会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。 〔予想EPS増減社数〕 今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。 〔予想PBR(今期末)〕 前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。 〔予想ROE(来期ベース)〕 前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。 〔リスクプレミアム〕 特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り |