8月24日妥当レンジ 22,900円~24,800円
米・墨 新協定は、日本への二国間協定の圧力を加速!?

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

 

<米利上げの打ち止め時期への観測から株高に>
■21日にトランプ陣営の選対本部長であったマナフォート氏が脱税などの罪で有罪の評決を受けた。また、トランプ氏の弁護士であったコーエン氏が選挙資金法の罪を認め、モラー特別捜査官に協力する用意があると伝えられた。こうしたスキャンダルが市場に与える影響が限定されるのは、1)トランプ支持者の態度が変わらないこと、2)大統領を更迭するには共和党優位の上院で3分の2以上の賛成が必要であることによる。
■次官級の米中通商協議は大きな進展なく終了。23日には160億ドル相当の中国からの輸入品に対して、25%の制裁関税が発動された(同時に中国も同金額の関税を発動)。
■ポンペオ国務長官の訪朝が、24日のトランプ大統領の指示によって中止となった。トランプ氏は中国の北朝鮮への対応も中止理由に挙げ、中国への圧力を一段と強める姿勢を示した。
■こうした緊迫感の高まる状勢の中で、米国株式市場は24日にナスダック、S&P500ともに史上最高値を更新した。ジャクソンホールでのパウエルFRB議長講演(24日)において、利上げの打ち止め時期が近づいたと市場に受け止められたことが大きな要因。また、27日にメキシコ(墨)と新たな貿易協定について合意がなされた。自動車の無関税輸出の条件である域内部材調達比率の引上げ、製造工程における賃金基準などが合意内容。28日にカナダ外相と協議をする予定。
■米国株式市場の上昇を受けて、日本株も上昇傾向にある。ただし、米・メキシコの合意は、国内自動車部品メーカーにとってはマイナス要素であると同時に、2国間協定を日本も求められる可能性が強まる。米国株の上昇は米国経済の好調と、米長期国債の利回り低下に見られるように資金の米国還流の可能性が指摘される。NT倍率の拡大は短期資金の流入とも捉えられ、単純に追従するのはリスクが高いと考える。

 

<「コンセンサスDI」は50%に収斂>
■「IFIS/TIWコンセンサス225」は、前週比で来期・再来期がプラス。来期に関しては先週同様にソフトバンク(9984)の影響が大きかった。「コンセンサスDI」(前週比プラス企業とマイナス企業の比率)は、全期間で50%近辺に低下しており、プラストレンドが後退した可能性が指摘される。

 

 

 

◇日経平均妥当水準(レンジ)

22,900円~24,800 (前回22,800円~24,700円)

*「IFIS/TIWコンセンサス225」(8月24日)来期予想ベースEPSをもとに算出

◇IFIS/TIWコンセンサス225(8月24日)

今期予想EPS 1398.22 (前週 1400.80円)
来期予想EPS 1586.33 (前週 1577.02円)
再来期予想EPS 1640.51 (前週 1638.39円)
今期予想PER 16.16 (前週 15.90倍)
来期予想PER 14.25 (前週 14.12倍)
再来期予想PER 13.78 (前週 13.59倍)
来期予想PBR 1.14 (前週 1.14倍)
来期予想ROE 8.01% 前週 8.08%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
7.62% (前週 7.68%)

8月24日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出

 

 

図1NT倍率が、一段と上昇している。EPSの伸び率ではTOPIXが日経平均を上回っており、収益からは説明が付かない。短期資金による動きと見るならば反動リスクには要注意。


図2来期予想ベースのプラス企業比率は、 56.0%→50.0%→58.3%→55.2%→50.0%。
再来期予想ベースのプラス企業比率は、58.8%→52.0%→55.3%→60.752.0% 。
1Q決算効果が終わり50%付近に収斂。

[注:4~5月は例年、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]

 

出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2014年1月から表示

 

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り

 

株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。