7月13日妥当レンジ 23,200円~25,100円
意外高でも慎重スタンスは変わらず

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

 

<貿易摩擦はドル高(円安)要因?>

■先週の株式市場は予想外の上昇となった。この背景としては、1)トランプ政権が10日発表した2,000億ドル相当の追加関税についての織り込みが進んだ、2)米企業決算が好調であること、3)13日発表の中国貿易統計が輸出入ともに好調であったこと、112円台後半にまで一気に円安が進んだこと、等が挙げられる。
■貿易摩擦は、米景気の下押し要因になることからドル安要因と見られていたが、関税による米国内の物価上昇がFRBによる利上げペースを早める、対米直接投資によってマネーフローに変化を齎す等の理由から、ドル高要因と看做されるように変わってきた。足もとは、ドル高とNY株式市場の好調を受けて日本株の上昇局面が続くと考えるが、新たな懸念材料も浮上している。
■13日に米モラー特別検察官は、2016年の大統領選挙に介入した疑いから、ロシア軍の情報当局者12人を米連邦大陪審に起訴した。トランプ陣営関係者との連携は不明であるものの、今後の展開次第では11月の米議会中間選挙に大きな影響を与える可能性がある。
■11-12日の北大西洋条約機構(NATO)の首脳会談後に、トランプ大統領は記者会見を開催し、加盟国が国防支出をGDPの2%に増やす目標を前倒ししたことで合意したと発表(ただし、マクロン仏大統領やコンテ伊首相は否定)。7月下旬頃に予定されている日米閣僚級の貿易協議(FFR)において、米側から厳しい要求が突きつけられる可能性も指摘できる。
■1-6月の中国の貿易統計は好調であったが、関税発動を避けるために前倒しが行われた面も有り、追加関税が発動された7月の統計(8月中旬発表)には警戒が必要である。

<コンセンサス予想EPSは全期間で前週比マイマス>

■「IFIS/TIWコンセンサス225」は、前週比で全期間においてマイナスであった。コンセンサスDI(前週比プラス企業とマイナス企業の比率)も、今期・再来期はかろうじて50%を確保したが、来期ベースは大きく50%割れであった。ここからの上値は深追いは禁物と考える。

 

 

◇日経平均妥当水準(レンジ)

23,200円~25,100 (前回22,800円~24,700円)

*「IFIS/TIWコンセンサス225」(7月13日)来期予想ベースEPSをもとに算出

◇IFIS/TIWコンセンサス225(7月13日)

今期予想EPS 1373.57 (前週 1373.94円)
来期予想EPS 1583.55 (前週 1583.78円)
再来期予想EPS 1631.19 (前週 1631.54円)
今期予想PER 16.45 (前週 15.86倍)
来期予想PER 14.27 (前週 13.76倍)
再来期予想PER 13.85 (前週 13.35倍)
来期予想PBR 1.16 (前週 1.13倍)
来期予想ROE 8.14% 前週 8.22%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
7.76% (前週 7.91%)

7月13日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出

 

TIW1NT倍率は199811月以来の13.0超。


TIW2
来期予想ベースのプラス企業比率は、 
51.2%→60.6%
→52.0%
42.1%43.0%。

再来期予想ベースのプラス企業比率は、56.7%→59.8<%→53.4%47.3%
→50.9%。

来期ベースは50%割れ続く。

[注:4~5月は例年、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]

 

出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2014年1月から表示

 

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り
株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。