3月23日妥当レンジ 21,200円~22,900円
貿易戦争への懸念は米中協議開始で一旦和らいだが

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

 

<貿易戦争は一旦、落とし所を模索する展開であるが>

■22日に中国に対してトランプ大統領は通商法301条に基づく貿易制裁を認める大統領令に署名。家電製品などを対象に約1300品目(総額500~600億ドル相当)に対して最大25%の関税を課すことを決定した。また、これとは別に鉄鋼・アルミニウムの輸入制限も発動した。これに対抗して、中国は米国からの輸入製品に対して最大25%の関税を課す準備に入った。
■22日の米国株の急落を受けて、23日の日経平均株価は974円安。ドル円も104円台半ばまでドル安(円高)が進んだ。
■しかし、週明けは一転。中国は米国に対する貿易黒字削減のために韓国や台湾から購入している半導体を米国経由に切り替えること提案していること(25日・英FT)、米政府が中国の劉鶴経済担当副首相に書簡を送り、米国製自動車に対する関税引下げ等を要請したこと(26日・米WSJ)、の報道から両国が妥協点を協議しているとの見方から市場の懸念が後退した。26日のNY株式の上昇を受けて、27日の日経平均株価も21,000円台を回復している。
■しかしながら、単純には楽観はできない。鉄鋼・アルミニウムの輸入制限の適用除外に日本が含まれていないことが象徴するように、トランプ大統領の狙いは、中国にだけ焦点を当てたものではなく、EUや日本も含めて通商条件の変更を迫るものであり、今後も金融市場に強い影を落とすことが予想される。

<IFIS/TIWコンセンサス225:来期・再来期は前週比プラスに>

■3月23日時点のIFIS/TIWコンセンサス225(日経225のコンセンサスEPS)は3週ぶりに来期・再来期ベースが前週比プラスとなった。「コンセンサスDI」(前週比プラスになった企業数の比率)も、来期・再来期ともに50台に回復。警戒レベルは一旦下がったようである。
■内政面では引き続き森友問題に揺れており、市場に不透明感が強く残る。市場心理の改善には限界があると思われ、企業業績見通しへの不安が和らぐ決算発表後(5月上旬頃)まで、当面の日経平均株価は上値が重い状態が続くと思われる(21,000円台前半か?)。

 

◇日経平均妥当水準(レンジ)

21,200円~22,900 (前回21,750円~23,500円)

*「IFIS/TIWコンセンサス225」(3月23日)来期予想ベースEPSをもとに算出

◇IFIS/TIWコンセンサス225(3月23日)

今期予想EPS 1321.95 (前週 1324.89円)
来期予想EPS 1393.77 (前週 1391.53円)
再来期予想EPS 1581.91 (前週 1578.16円)
今期予想PER 15.60 (前週 16.36倍)
来期予想PER 14.79 (前週 15.58倍)
再来期予想PER 13.03 (前週 13.74倍)
来期予想PBR 1.09 (前週 1.14倍)
来期予想ROE 7.39% 前週 7.32%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
7.18% (前週 7.02%)

3月23日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出



図1
テクニカルな要因から妥当レンジも下方シフトした。ただし、現株価の割安感は一段と顕著になっている。為替次第の面もあるが、来期コンセンサス予想
EPSが底堅く推移するのであれば、更なる底割れの可能性は小さいと考える。

 


図2来期予想ベースのプラス企業比率は、 57.5%→53.5%→38.346.853.2%。
再来期予想ベースのプラス企業比率は、57.1%→54.7%→42.545.959.1%。
3週ぶりに50台を回復。アナリストによる為替調整はひとまず終了か??

[注:4~5月は例年、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]

図3 12ヵ月フォワード予想PERでは、20162月の水準に近づいており、割安感顕著。

 

図4

東証1部の配当利回りも2017年前半水準まで回復(上昇)。

出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2014年1月から表示

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り

 

株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。