9月22日妥当レンジ 21,150円~22,850円
目先材料出尽しであるが、緩やかな円安がサポート

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

 

<日本株の好環境は継続、強気スタンスを継続>

■19-20日の米FOMCにおいて、事前の予想通り10月からのバランスシート縮小(=償還債券の再投資の段階的縮小)が決定された。市場の注目はドットチャート(政策金利見通し)にあったが、前回(6月)の予想と同じ、2017年にもう1回、2018年に3回の利上げが見込まれたことから、米長期金利の上昇期待が維持され、為替は21日に一時期112.716円/ドルと円安に振れた。20-21日の日銀金融政策決定会合では、現状の政策維持が決定されたが、新任の片岡委員から現状のイールドカーブ・コントロールでは金融緩和は不十分として反対票が投じられる波乱があった。
■米国はバランスシート縮小の決定と利上げ継続、欧州も来年の早い段階でのテーパリング実施が予想されるのに対して、日本は量的緩和からの脱却が見えず、金利差拡大から円安方向が予想される。北朝鮮リスクが引き続き重石にはなるものの、日本株に取っては好環境が継続すると考える。
■25日に、安倍首相は28日の臨時国会冒頭に衆院を解散すると表明。また同日、小池東京都知事は国政政党「希望の党」の立ち上げと党首就任を表明した。与党有利の見方に変化が生じる可能性もあり、注目される。
■今週は、週末(29日)に国内主要統計(消費者物価・家計調査・失業率・有効求人倍率・鉱工業生産、等)が発表される他、米国PCEデフレータ(29日)、中国財新製造業PMI(29日)の発表がある。
■10月1日にはスペインのカタルーニャ州で独立の是非を問う住民投票が実施される見通しであるが、憲法裁判所の違憲判決と差し止め命令等から混乱が予想される。欧州の政治情勢は仏マクロン大統領誕生以降は比較的安定していたが、金融市場への影響を注視する必要がある。
■9月22日時点のIFIS/TIWコンセンサス225(日経225のコンセンサスEPS)は、全期間で前週比プラス。コンセンサスDI(=予想EPSの前週比プラス比率)も、サンプル数が少ないながら全期間が50(中立水準)を超えて上昇した。日経平均株価の妥当レンジも大幅に上方へシフトしており、強気で臨みたい。

 

◇日経平均妥当水準(レンジ)

21,150円~22,850 (前回20,750円~22,450円)

*「IFIS/TIWコンセンサス225」(9月22日)来期予想ベースEPSをもとに算出

◇IFIS/TIWコンセンサス225(9月22日)

今期予想EPS 1161.08 (前週 1160.62円)
来期予想EPS 1283.82 (前週 1282.87円)
再来期予想EPS 1428.87 (前週 1428.19円)
今期予想PER 17.48 (前週 17.15倍)
来期予想PER 15.81 (前週 15.52倍)
再来期予想PER 14.20 (前週 13.94倍)
来期予想PBR 1.22 (前週 1.19倍)
来期予想ROE 7.70% 前週 7.67%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
7.27% (前週 7.28%)

9月22日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出




図1北朝鮮リスクは依然として残る分だけ、妥当レンジに対して下方圧力はあるものの、妥当レンジは上方シフトしており、株価は引き続き上昇トレンドにあると考える。

 

 

図2来期予想ベースのプラス企業比率は、 58.2%→54.7%→55.4%→50.0%→64.0
再来期予想ベースのプラス企業比率は、59.9%→52.5%→62.551.5%→57.1%。
サンプル数は9月末を控えて減少傾向にあるものの、強いプラストレンドを再確認!

 

[注:4~5月は例年、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]

 

 出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2012年1月から表示

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り

 

株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。