8月25日妥当レンジ 20,600円~22,250円
地政学リスクに揺れるが、米統計発表からリバウンド期待

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

 

<週末の米雇用統計に注目が集まる>

■7月の米住宅着工件数(16日発表)に続いて、米中古住宅販売件数(24日)も前月を下回る内容でした(前月比▲1.3%)。マーケットの反応はややネガティブなようでしたが、着工件数と同様に在庫不足が減速の背景のようです。販売可能在庫は前年比▲9%と26ヵ月連続で減少しており、その結果として物件価格が高止まりしており、買い控えが生じている模様です。これについては解釈は分かれるようですが、経済が停滞に入っているとは言えない様に思えます。
■欧州経済は、8月のユーロ圏PMI総合指数(速報・23日)は7月を僅かですが上回って好調です。8月のドイツIFO企業景況感指数(25日)も7月とほぼ同じ高水準を保っています。
■国内では、7月の全国消費者物価指数(25日)は、エネルギー価格の影響を受けたものでしたがコア総合で前年同月比+0.5%となりました。
■先週のマーケットはジャクソンホール会議におけるイエレンFRB議長とドラギECB総裁の講演(いずれも25日)を控えて膠着した展開でした。イエレン議長は金融政策に関しては触れず、ドラギ総裁も具体論には踏み込まず、市場は肩透かしを食らった感じでした。
■今週は、ADP雇用統計(30日)、ISM製造業景況指数(1日)、雇用統計(1日)と米国主要統計の発表が続く。大きく市場を失望させない限りは次回のFOMC(9/19-20)での緩和縮小の開始を決定付けると思われるだけに市場は好反応を示すものと考える。

<週後半に向けてリバウンドを見込む>

■8月25日時点のIFIS/TIWコンセンサス225(日経225のコンセンサスEPS)は、来期・再来期でコンセンサス予想EPSはプラス。今期はマイナスであったがソフトバンクグループ(9984)に対する予想が影響した面が強い。コンセンサスDI(=予想EPSの前週比プラス比率)は5週連続で全期間50を上回って推移している。
■29日朝の北朝鮮の弾道ミサイル発射から地政学リスクが急速に高まり円高に振れたが、米国統計の発表からリバウンド局面が期待できる。

 

 

◇日経平均妥当水準(レンジ)

20,600円~22,250 (前回20,550円~22,200円)

*「IFIS/TIWコンセンサス225」(8月25日)来期予想ベースEPSをもとに算出

◇IFIS/TIWコンセンサス225(8月25日)

今期予想EPS 1166.85 (前週 1169.54円)
来期予想EPS 1285.80 (前週 1285.28円)
再来期予想EPS 1407.00 (前週 1404.53円)
今期予想PER 16.67 (前週 16.65倍)
来期予想PER 15.13 (前週 15.15倍)
再来期予想PER 13.83 (前週 13.86倍)
来期予想PBR 1.17 (前週 1.17倍)
来期予想ROE 7.73% 前週 7.72%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
7.38% (前週 7.36%)

8月25日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出




図1
妥当レンジと株価との乖離は一段と強まる。
マーケットは地政学リスクを強く織り込んでいるのか?
それとも近い将来の円高を予想しているのだろうか?

 


 

図2来期予想ベースのプラス企業比率は、 56.8%→57.8%→57.2%→65.958.2
再来期予想ベースのプラス企業比率は、66.758.6%→61.755.2%→59.9%。
引き続き、高水準を安定的にキープ。

[注:4~5月は例年、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]

 

図3株価上昇が顕著だった2015年夏との比較では、約12%の円高ではある。円高だから株価が冴えないとも言えるが、円高にもかかわらずしっかりしているとも言える。

 

図4予想ROEの改善も続いている。

 出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2012年1月から表示

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り

 

株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。