8月4日妥当レンジ 20,750円~22,400円
マグマ蓄積進むが、材料難から上値重い展開の継続か?

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

 

<米経済指標は振れ気味であるが、高水準を維持>

■先週は米主要指標の発表が続いたが、米雇用統計の発表までは、市場予想を下回り、やや失望感のある内容だった。ISM製造業景況指数(1日)56.3(市場予想:56.4)、ADP雇用統計(2日)+17.8万人(市場予想:18.5万人)、ISM非製造業景況指数(3日)53.9(市場予想:56.9)。しかし、4日発表の米雇用統計は、こうした景気減速感を打ち消すように、非農業部門雇用者数は20.9万人増と市場予想(18万人)を上回り、失業率も4.3%と6月から0.1ポイント低下した。
■次回の米FOMC(9/19・20)で資産縮小の開始が決定されるには、9月上旬発表の8月の経済指標が重要であることは言うまでもないが、現時点では市場シナリオに沿って推移していると考えられる。
■米国以外でも、ユーロ圏実質GDP(4-6月)速報(1日発表)は前期比年率換算で+2.3%と17四半期連続のプラス成長。財新・マークイット中国製造業PMI(7月分:1日発表)も51.1となり、輸出受注の好調等から6月(50.4)を大きく上回った。
■国内も6月の景気動向指数(7日)は、一致指数が2ヵ月振りに上昇し、先行指数は2ヵ月連続上昇した。
■経済環境には大きな死角は見当たらず、トランプ政権は相変わらず混迷しているものの、国内は内閣改造で支持率がやや持ち直している。

 

<割安感は大きく、9月のFOMCに向けて上昇ステージへ>

■1Q決算発表は後半も好調が期待できるものの、今週・来週は目立ったイベントが無く、8月は中央銀行の政策決定会合も行われないため、センチメントを押し上げるにはやや材料不足な状態である。次の上昇ステージに向けてマグマが蓄積されている段階と考えるが、上値の重い状態が継続しそうである。
■8月4日時点のIFIS/TIWコンセンサス225(日経225のコンセンサスEPS)は、日経平均の採用銘柄の変更もあり、全ての期間で予想EPSが10円以上のプラスとなった。妥当レンジも下限が2万750円にあり、依然として大きく割安に置かれている。9月の米FOMCに向けて地殻変動を期待する。

 

 

◇日経平均妥当水準(レンジ)

20,750円~22,400 (前回20,750円~22,400円)

*「IFIS/TIWコンセンサス225」(8月4日)来期予想ベースEPSをもとに算出

◇IFIS/TIWコンセンサス225(8月4日)

今期予想EPS 1164.88 (前週 1144.68円)
来期予想EPS 1277.00 (前週 1269.51円)
再来期予想EPS 1380.20 (前週 1369.66円)
今期予想PER 17.13 (前週 17.44倍)
来期予想PER 15.62 (前週 15.72倍)
再来期予想PER 14.46 (前週 14.57倍)
来期予想PBR 1.21 (前週 1.22倍)
来期予想ROE 7.73% 前週 7.75%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
7.27% (前週 7.26%)

8月4日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出


図1
7
日の反発は一時的なものに留まるのか?依然として妥当レンジから大きく下方に乖離した水準が続く。


 

図2来期予想ベースのプラス企業比率は、 50.5%→57.0%→55.4%→56.8%→57.8%。
再来期予想ベースのプラス企業比率は、58.6%→46.6%→54.9%→66.7%→58.6%。
サンプル数が増加する中で50%台後半の水準に

[注:4~5月は例年、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]

 

 

 

 出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2012年1月から表示

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り

 

株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。