6月2日妥当レンジ 20,700円~22,400円
足もとのリスクイベント通過後は、本格相場の到来か?
【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】
<目だった材料が無い中で日本株は大幅上昇>
■マーケット・センチメントが転換するような好材料が無い中で、先週(特に1日)の日本株は大きく上昇した。結果から見れば、1日はISM製造業指数はADP雇用統計が好調だった場合の持たざるリスクを回避するための買いであり、2日は特に好調だったADP雇用統計を受けた米雇用統計への期待からの円安がサポートした。
■31日にアフガニスタンで大規模テロが発生したことや、1日朝に発表された5月の中国製造業PMI(財新・マークイット)が50を割り込んだこと、トランプ大統領による「パリ協定」離脱は、殆どマイナスの影響を与えなかった。ここから推察されるのは、1)世界的に滞留している投資資金は膨大であり、2)日本株は割安で出遅れているということである。実際に5日の東京市場でも、(米雇用統計の非農業部門雇用者数の増加が予想を下回ったことや賃金の伸びが緩慢であったことから)円高に振れたものの、株式市場は小幅な調整に留まった。
■今週、来週はリスク要因となりえるマーケット・イベントが目白押しであるが、下落局面では押し目買いが期待されるだけに手放しで楽観は出来ないものの、弱気になる必要はないと思われる。
■今週は8日に英国下院選挙、同じく8日にコミー前FBI長官の議会証言が予定されている。これも結果次第では大きなリスク要因となりえる。ECB理事会(8日)、5月の中国貿易統計(8日発表)にも気を配りたい。
■来週は、米FOMC(13-14日)で利上げが見込まれている他、日銀金融政策決定会合(15-16日)が予定されている(材料出尽くしで円高?)。15日に予定されているユーロ圏財務相会合でギリシャへの融資再開が決まるかどうかも注目点。また、イスラム教のラマダン期間中はテロの発生が相次ぐことが懸念されている(2017年のラマダンは5/27~6/25)。ISがラマダン前に「総力戦」を呼びかける動画を公開している(ラマダンの期間中に努力(=ジハード)すると天国に行ける可能性が高まると言われる)。
■リスク・イベントを通過し、ラマダン明けの6月下旬以降は本格的に明るさが見えてくると考える。
◇日経平均妥当水準(レンジ)
20,700円~22,400円 | (前回20,250円~21,900円) |
*「IFIS/TIWコンセンサス225」(6月2日)来期予想ベースEPSをもとに算出
◇IFIS/TIWコンセンサス225(6月2日)
今期予想EPS | 1139.39円 | (前週 1138.52円) |
来期予想EPS | 1256.91円 | (前週 1255.26円) |
再来期予想EPS | 1373.08円 | (前週 1367.30円) |
今期予想PER | 17.71倍 | (前週 17.29倍) |
来期予想PER | 16.05倍 | (前週 15.68倍) |
再来期予想PER | 14.69倍 | (前週 14.40倍) |
来期予想PBR | 1.23倍 | (前週 1.19倍) |
来期予想ROE | 7.65% | (前週 7.59%) |
来期予想 インプライド・リスク・プレミアム |
7.18% | (前週 7.19%) |
6月2日 日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出
膠着が続くとの先週の予想を裏切り、20,000円を抜けた。今週は水準固めの週か? 基本は内需系・中小型が中心の相場と考えるが、大きく上放れする際は「円安」が要因となり、輸出株主導となる点には注意。
来期予想ベースのプラス企業比率は、 56.2%→73.5%→56.0%→50.3%→52.0%。
再来期予想ベースのプラス企業比率は、52.3%→64.6%→56.8%→47.9%→50.7%。
来期・再来期ともに50%を若干上回る水準。1Q決算までは50%近辺での推移か?
[注:4~5月は例年、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]
出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2012年1月から表示
「IFIS/TIWコンセンサス225」について IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。 理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。 4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。 〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕 会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。 〔予想EPS増減社数〕 今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。 〔予想PBR(今期末)〕 前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。 〔予想ROE(来期ベース)〕 前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。 〔リスクプレミアム〕 特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り |