4月7日妥当レンジ 18,500円~20,000円
地政学的リスク拡大に神経質な展開か?

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

 

<国内経済指標は概ね強い数値>

■先週は、ロシア地下鉄テロ(3日)、北朝鮮のミサイル発射(5日)、米国によるシリアへのミサイル攻撃(6日)、エジプト教会テロ(9日)と、地政学的リスクが続いた。
■米国経済指標は、3月のISM製造業景況指数(3日)・ISM非製造業景況指数(5日)はいずれも前月を下回った。7日発表の3月の米雇用統計では、非農業部門雇用者数は前月比+9.8万人増(2月+21.9万人)となり、市場予想(+18万人)をも大きく下回った。事前発表のADP雇用統計(5日)が好調であったためやや失望されたが、失業率(4.7%→4.5%)、平均時給(前月比+0.2%、前年比+2.7%)が改善しており、完全雇用に近づく中での鈍化と見られている。
■5日発表のFOMC議事録(3/14-15分)において、FRBが保有有価証券の残高を減らす(再投資政策の変更)方針で議論されていることが明らかとなり、これにより利上げペースの鈍化の可能性も指摘されている。米国株にとっては重石になる可能性も高く、日本株への影響も懸念される。今週は、中国貿易統計(13日)、米小売売上高(14日)、米国為替報告書議会提出(15日)が注目される。

 

<コンセンサス予想(来期ベース)は、前週比小幅マイナスに>

■4月7日時点のIFIS/TIWコンセンサス225(日経225のコンセンサスEPS)は、来期・再来期ベースは前週比マイナス、来期ベースがマイナスとなったのは23週ぶり。トヨタ自動車(7203)をはじめ自動車が軒並みマイナス。他には鉄道や医薬品関係のマイナスが目立った。「225コンセンサスDI」(前週比プラスとなった銘柄数の比率)も、全期間において50%割れ。2月時点よりも2円/ドル程度の円高となっており、アナリストの為替前提の見直しが図られたものと推察される。
■7日時点では、12ヵ月フォワードベースの予想EPSからの日経平均株価の妥当レンジは、19,450~21,080円と前週から約180円低下した。地政学的リスクが弱まれば上昇に向かうと考える(念のため、リスクオフに傾いた場合の下値目処は17,000円、前年4月の移動平均PER14.71倍×現在の移動平均EPS1154.17円)。

 

◇日経平均妥当水準(レンジ)

18,500円~20,000円 (前回18,700円~20,200円)

*「IFIS/TIWコンセンサス225」(4月7日)来期予想ベースEPSをもとに算出

◇IFIS/TIWコンセンサス225(4月7日)

今期予想EPS 1058.71 (前週 1057.46円)
来期予想EPS 1164.33 (前週 1164.80円)
再来期予想EPS 1270.25 (前週 1271.64円)
今期予想PER 17.63 (前週 17.88倍)
来期予想PER 16.03 (前週 16.23倍)
再来期予想PER 14.69 (前週 14.87倍)
来期予想PBR 1.17 (前週 1.19倍)
来期予想ROE 7.32% 前週 7.34%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
6.94% (前週 6.92%)

*4月7 日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出



図1
一年前の今頃は、日銀の緩和に対する手詰まり感を背景に円高・株安の展開であった。円高で輸出関連は買いづらいものの内需関係は好調で割安感があるという状態。今回は地政学的リスクの高まりから円高圧力からの下部の下押し、バリュエーション面で割安という面で、昨年と同じ展開(悪抜け上昇)を期待する。

 


図2
来期予想ベースのプラス企業比率は、 60.2%→59.5%→60.2%→63.8%→48.5%。
再来期予想ベースのプラス企業比率は、59.2%→57.8%→58.4%→54.5%→44.8%。

来期・再来期も50%割れ! 足もとの為替水準を見込んだ修正か?

[注:4~5月は例年、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]

 

 

図3地政学的リスクの高まり等から12ヵ月移動平均の予想PER16.17倍まで低下。前年の48日の14.71倍まで低下した場合は、17,000円。ここが最悪の場合の目処か?

 

図4対象決算期の移行により、来期→今期、再来期→来期にスムーズに移行できるかどうかがこれからのポイント。直前取材の禁止によって以前よりアナリスト予想が当てにならないとの声があるが、どうだろうか。

 

 出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2012年1月から表示

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り

 

株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。