1月13日妥当レンジ 18,800円~20,300円
Brexitのハードランディングから目先円高懸念強まる

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

 

<12日のトランプ次期大統領の会見は最悪>

■先週は12日のトランプ次期大統領の記者会見を機にマーケットはリスクオフに転じた。大統領当選時に見せた紳士的な振る舞いは消え、選挙期間中と同様に感情的な発言が目立つだけで、具体的な政策への言及は限られた。20日の就任式において、具体的な経済政策が示されるとも思われず、市場はトランプ氏の発言に振り回される展開が今後も続きそうである。
■足もとで注意しなければならないのは、英国のBrexitである。17日にメイ首相は、英国が欧州単一市場(EU)からの撤退を発表すると見られている。Bloombergニュースは、移民をめぐる権限の全面的な回復、立法権限を英国議会に戻すこと、英国の法律に対する欧州司法裁判所の管轄権を終わらせること、を含む12の主要目的を発表すると報じている。メイ首相の交渉戦術であるのか、本気なのかは定かではないが、英ポンドの下落と同時にユーロも売られる展開が予想され、結果的に円高に振れる可能性には注意が必要である。
■日本株に関しては、先週も申し上げたが2017年度は国内景気の浮揚と企業収益の改善を受けて上昇基調が続くという見方には変わりはない。先週からの下落幅も想定の範囲内に留まっていると考える。今週は、メイ首相演説(17日)、イエレンFRB議長講演(18・19日)、ECB理事会・ドラギ総裁記者会見(19日)、大統領就任式(20日)とイベントが続くが、それを抜ければ悪材料は一旦は出尽くしになると考える。
■10日に世界銀行が、16日にIMFが世界経済見通しを公表した。世界銀行は前回(6月)の2.8%から2.7%に引き下げたものの、IMFは前回(10月)を据え置き3.4%とした。

 

<コンセンサス予想は全期間プラス>
■1月13日時点のIFIS/TIWコンセンサス225(日経225のコンセンサスEPS)は全期間で前週比プラスであった。「225コンセンサスDI」(前週比プラスとなった銘柄数の比率)は70%台だ前週から大きく低下したが、来期ベースで50%台を確り維持している。前週(ならびに前々週)の数値がサンプルが少なくやや異常値であったと思われる。

◇日経平均妥当水準(レンジ)

18,800円~20,300円 (前回18,800円~20,350円)

*「IFIS/TIWコンセンサス225」(1月13日)来期予想ベースEPSをもとに算出

◇IFIS/TIWコンセンサス225(1月13日)

今期予想EPS 1011.68 (前週 1009.82円)
来期予想EPS 1104.03 (前週 1101.22円)
再来期予想EPS 1213.03 (前週 1210.05円)
今期予想PER 19.06 (前週 19.27倍)
来期予想PER 17.47 (前週 17.67倍)
再来期予想PER 15.90 (前週 16.08倍)
来期予想PBR 1.29 (前週 1.30倍)
来期予想ROE 7.36% 前週 7.34%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
6.82% (前週 6.78%)

*1月13 日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出

 

図1
目先的には下ブレの可能性もあるが、水準的には割安感が台頭しつつある。

 


図2
来期予想ベースのプラス企業比率は、 70.3%→72.7%→65.5%→73.8%→57.5%。
再来期予想ベースのプラス企業比率は、68.9%→68.2%→69.8%→73.5%→65.7%。

来期ベースは50%台に急落も再来期は高水準を維持。

 

 

 

[注:4~5月は例年、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]

 

 

 

 

 出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2012年1月から表示

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り

 

株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。