7月15日妥当レンジ 16,100円~17,400円
“ヘリマネ”期待で浮いたところは利食いポイント
【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】
<“ヘリマネ”期待から為替は円安に>
■地政学的(あるいは宗教・人種的)な事件が先週は多かったにもかかわらず、トルコのクーデターが早期に収束されたこともあり、リスクオフのトレンドが今週も続きそうな気配である。
■中国経済は、15日発表の第2四半期GDPが、前年同期比+6.7%と市場予想(+6.6%)を上回った。6月の鉱工業生産ならびに小売売上高も市場予想を上回って着地しており、下振れリスクは残るものの、足元での懸念は後退した。米国も6月の小売売上高(季調済)は、前月比+0.3%と3ヵ月連続でプラスとなった。
■先週、円安が加速したのは、“ヘリコプター・マネー”(日本政府が非市場性の永久債を発行し、日銀が引き受ける)の可能性に対する観測がプルームバーグの報道によってなされたことが一因である。ただし、菅官房長官は今月末をめどに取りまとめる経済対策の財財源として赤字国債を発行する予定はないと明言している(18日)。
■19日の米国市場では、トルコのクーデター発生から104円台半ばまで円高に振れた為替も106円台に戻し、NY株式市場も堅調に推移している。今週から来週にかけて、中央銀行の会合が続く(ECB理事会21日、米FOMC26-27日、日銀政策決定会合28-29日)。ECB理事会ならびに米FOMCでは政策変更は予想されてはいないが、日銀の追加緩和策への期待は強く残る。そのため、為替は円安含みの展開がまだ続きそうであり、日本株に関しては上値への期待が残ると考える。
<コンセンサス予想EPSは悪化傾向が顕著>
■7月15日時点のIFIS/TIWコンセンサス225(日経225のコンセンサスEPS)は、2週連続で全期間マイナスとなった。自動車、電気など輸出セクター弱いことに加えて、一部の内需銘柄でも頭打ちになっているように見受けられる。為替次第ではあるが、ここからの上昇は利食いのポイントと考える。
■8月1日付で2部に指定替えとなるシャープ(6753)に替えて、ヤマハ発動機(7272)が採用銘柄となる。
◇日経平均妥当水準(レンジ)
16,100円~17,400円 | (前回15,150円~16,350円) |
*「IFIS/TIWコンセンサス225」(7月15日)来期予想ベースEPSをもとに算出
◇IFIS/TIWコンセンサス225(7月15日)
今期予想EPS | 980.34円 | (前週 986.66円) |
来期予想EPS | 1068.66円 | (前週 1070.51円) |
再来期予想EPS | 1168.63円 | (前週 1173.98円) |
今期予想PER | 16.83倍 | (前週 15.31倍) |
来期予想PER | 15.44倍 | (前週 14.11倍) |
再来期予想PER | 14.12倍 | (前週 12.87倍) |
来期予想PBR | 1.08倍 | (前週 0.98倍) |
来期予想ROE | 7.00% | (前週 6.97%) |
来期予想 インプライド・リスク・プレミアム |
7.07% | (前週 7.29%) |
*7月15 日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出
先週は大きく反発。その結果、割安感は薄らいだが妥当レンジの中位。
しかし、予想EPSは下方トレンドにありここから先は強気になり難い。
来期予想ベースのプラス企業比率は、 38.7%→48.5%→35.8%→23.0%→38.0%。
再来期予想ベースのプラス企業比率は、47.5%→56.7%→35.6%→32.6%→32.7%。
前週よりは回復したものの低位な水準が続く。
[注:4~5月は例年、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]
予想PERは5月中の水準をほぼ奪還。ここからのPER上昇は業績トレンドの上向きが必要。
出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2012年1月から表示
「IFIS/TIWコンセンサス225」について IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。 理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。 4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。 〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕 会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。 〔予想EPS増減社数〕 今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。 〔予想PBR(今期末)〕 前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。 〔予想ROE(来期ベース)〕 前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。 〔リスクプレミアム〕 特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り |