7月1日妥当レンジ 15,650円~16,950円
米経済指標の好調から目先は反発が期待できるが・・・

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

 

<“離脱”通告は早くても10月以降>
■キャメロン首相の後任選びは、保守党下院議員による候補者の絞込み(2人)の後に、保守党党員による投票によって党首を決定の後、10月に下院で首相が選出される。残留派のメイ内相と離脱派のゴーブ司法相が有力候補とされる。しかし、どちらが新首相に就任してもEUへの離脱通告が行われるとの見方が現時点では有力である。
■バングラディッシュにおいて2日に日本人7人を含む20人が犠牲になったテロに続き、3日にはイラクで150人超が死亡する爆弾テロが発生した。世界的に貧富の差が拡大する不均衡が強まる中で、民族主義や宗教色が強まりつつある。米大統領選(11月~17年1月)だけでなく、オーストリアやり直し大統領選挙(9月~10月)、オランダ総選挙(17年3月)、フランス大統領選挙(17年4-5月)など、政治的イベントへの注目度が高まりつつある。国内での10日に参議院選挙を控えるが、与党(自民・公明)が改選前議席を確保できるかどうかに注目が集まりそうである。
■国内経済は停滞感が強まりつつある。5月の鉱工業生産指数(30日発表)は前月比▲2.3%。ブレグジットの影響次第では4-6月は2四半期連続でマイナスとなる可能性もある。1日発表の日銀短観、家計調査(5月)も芳しくない。中国財新製造業PMI(6月)は48.6と5月(49.2)から大きく低下した。
■そうした中で米ISM製造業景気指数は53.2と5月(51.3)から大きく上昇。8日発表の米雇用統計に期待感が集まりそうである(市場予想は非農業部門雇用者数18万人増)。

<コンセンサス予想EPSは再び悪化傾向へ>
■7月1日時点のIFIS/TIWコンセンサス225(日経225のコンセンサスEPS)は、今期・来期がマイナスとなった。自動車、機械といった輸出セクターが不振である。前週比較でプラスになった企業の比率も来期・再来期ともに再び30%台へと大きく下落している。目先は割安感と米経済指標への期待から株価はやや持ちなおしているものの、企業業績見通しの下方トレンドから強気にはなり難い。参議院選挙の結果も慎重に見極めたいところである。

 

◇日経平均妥当水準(レンジ)

15,650円~16,950円 (前回15,350円~16,600円)

*「IFIS/TIWコンセンサス225」(7月1日)来期予想ベースEPSをもとに算出

◇IFIS/TIWコンセンサス225(7月1日)

今期予想EPS 994.61 (前週 1001.55円)
来期予想EPS 1079.72 (前週 1087.12円)
再来期予想EPS 1189.37 (前週 1188.95円)
今期予想PER 15.77 (前週 14.93倍)
来期予想PER 14.52 (前週 13.75倍)
再来期予想PER 13.19 (前週 12.58倍)
来期予想PBR 1.02 (前週 0.98倍)
来期予想ROE 7.03% 前週 7.15%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
7.25% (前週 7.38%)

*7月1 日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出

 

 

図1目先的には、割安感からと、米経済指標の好調から上昇余地があるものの、円高による企業業績見通しの下方修正が懸念されるだけに強気にはなり難い。

 

 

図2来期予想ベースのプラス企業比率は、 43.4%→45.1%→38.7%→48.5%→35.8%。
再来期予想ベースのプラス企業比率は、48.5%→49.7%→47.5%→56.7%→35.6%。

再び30%台に低下、輸出企業の見通し悪化を反映か?

[注:4~5月は例年、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]

 

 

 

出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2012年1月から表示

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り

 

株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。