6月17日妥当レンジ 15,800円~17,100円
英国民投票後の展開、残留でも日本株は上値が重い

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

 

<労働党議員殺害を機に残留派がやや優勢に>
■16日に残留派の労働党議員が殺害されたが、その後の世論調査では残留派がやや優位に立っている。と言っても残留・離脱は拮抗しており、予断を許さない状況が続く。23日の投票の結果は日本時間の24日午後0時過ぎには大勢が判明する模様である。
■離脱となればさらに円高・株安が進み、残留となれば円安・株高になると予想されるが、残留が決定されても為替も株価も5月末頃の水準(110円・17,000円)には戻らないとの見方が強まっている。その理由として、1)米国の利上げの可能性が遠のき、7月はおろか9月も難しいとの観測が有力であること、2)日銀の政策余地はかなり限定されており、追加緩和には動きづらいこと、3)参議院選挙(7/10)において与党(自・公)が改選前の議席を確保できない可能性、4)米大統領選挙において、ドル安圧力がかかりやすいこと、などが挙げられる。特に、米国の金融政策の影響は強く、21日・22日のイエレン議長の議会証言には注目が集まるであろう。
■国内景気は引き続き低空飛行を続けている。5月の貿易統計(20日発表)では3ヵ月ぶりに貿易収支が赤字に転落。品目的には、鉄鋼・半導体電子部品・有機化合物などの輸出がマイナスとなった。5月の百貨店売上高(20日発表)は3ヵ月連続マイナス、インバウンド向け売上高も2カ月連続減少となった。

<コンセンサス予想EPSはマイナストレンド続く>
■6月17日時点のIFIS/TIWコンセンサス225(日経225のコンセンサスEPS)は、再来期は僅かにプラスであったが、今期・来期はマイナスであった。円高が進行する中で、業績見通しの下方への微調整が生じているようだ。マイナス企業の業種的な特徴はあまり見られないものの、幅広く小幅に調整している。
■株価水準は低位にあることから英国の残留によって反発は期待できるものの、頭の重い展開が続きそうである。中小型株の個別物色が当面は続きそうな印象である。

 

◇日経平均妥当水準(レンジ)

15,800円~17,100円 (前回16,550円~17,900円)

*「IFIS/TIWコンセンサス225」(6月17日)来期予想ベースEPSをもとに算出

◇IFIS/TIWコンセンサス225(6月17日)

今期予想EPS 992.02 (前週 993.62円)
来期予想EPS 1089.43 (前週 1090.05円)
再来期予想EPS 1186.72 (前週 1186.64円)
今期予想PER 15.73 (前週 16.71倍)
来期予想PER 14.32 (前週 15.23倍)
再来期予想PER 13.15 (前週 13.99倍)
来期予想PBR 1.02 (前週 1.09倍)
来期予想ROE 7.14% 前週 7.15%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
7.24% (前週 7.12%)

*6月17 日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出

 

 

図117日時点の株価は、妥当レンジ下限を下回っており、短期的にリバウンドする状況にあった。ただし、予想EPSのトレンドが弱含みで有ることは引き続き懸念材料。

 

 

図2来期予想ベースのプラス企業比率は、 44.7%→44.6%→43.4%→45.1%→38.7%。
再来期予想ベースのプラス企業比率は、44.1%→48.2%→48.5%→49.7%→47.5%。

円高進行により予想EPSの下方トレンドは継続か?

[注:4~5月は例年、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]

 

図3予想PER水準は下値不安の小さいところまで下落しているが、予想EPSの回復がポイント。

 

 

図4マーケットの底値近辺では東証1部の予想配当利回りが2部・JASDAQに近接する。現状はボトム圏?

 

出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2012年1月から表示

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り

 

株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。