6月10日妥当レンジ 16,550円~17,900円
英国民投票に揺れる、悪材料に反応しやすい時間帯

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

 

<英国のEU離脱の可能性上昇から市場はリスクオフに>
■EU離脱を問う英国民投票を控えて、離脱派優勢の世論調査が相次いでいることから、市場は急激にリスクオフに傾いている。米国のオーランドで12日に49人が死亡した銃乱射事件も離脱派の騰勢に繋がるとの見方も強い。
■6月3日の雇用統計ショックを受けて低下を続けていた米10年国債利回りは、1.59%と一段と下落し、長期国債利回り(日本・10年)も-0.170%へとマイナス幅を拡大している。短期的には英国の離脱懸念による影響があるものの、世界的な経済停滞への不安が高まりつつあることにも警戒が必要なようである。
■7日に世界銀行は2016年の世界経済見通しを1月時点の2.9%から2.4%へと大きく引き下げた。日米それぞれ0.8ポイント引き下げるとともに、資源輸出国に関して大幅な引き下げを行っている。中国経済も依然として未だ回復途上に無いことを示している。 9日発表の5月のCPI、13日発表の5月の中国小売売上高、1-5月の固定資産投資ともに予想をやや下回る水準であった。
■23日の英国民投票が終わるまではなかなか動きづらい展開が続きそうである。離脱ならドル円は100円割れ、残留なら110円という予想もある。14-15日米FOMC、15-16日の日銀金融政策決定会合において何らかの具体的な示唆(米国は次の利上げに関して、日銀は追加緩和の可能性)が無ければ一段と円高に振れる可能性もある。悪材料に反応しやすい地合いだけに注意が必要である。
■ただし、一方で日本株は十分に割安な水準に入ってきており、大きく下げた銘柄のリバウンド狙い、あるいは配当利回り銘柄の物色などに備えるべきと考える。

<コンセンサス予想EPSは全期間マイナス>
■6月10日時点のIFIS/TIWコンセンサス225(日経225のコンセンサスEPS)は、全期間においてマイナスであった。ただし、マイナス幅は縮小してきており、落ち着きどころが見えてきたようにも思われる。

 

◇日経平均妥当水準(レンジ)

16,550円~17,900円 (前回16,650円~18,000円)

*「IFIS/TIWコンセンサス225」(6月10日)来期予想ベースEPSをもとに算出

◇IFIS/TIWコンセンサス225(6月10日)

今期予想EPS 993.62 (前週 994.85円)
来期予想EPS 1090.05 (前週 1096.54円)
再来期予想EPS 1186.64 (前週 1192.80円)
今期予想PER 16.71 (前週 16.73倍)
来期予想PER 15.23 (前週 15.18倍)
再来期予想PER 13.99 (前週 13.95倍)
来期予想PBR 1.09 (前週 1.09倍)
来期予想ROE 7.15% 前週 7.17%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
7.12% (前週 7.10%)

*6月10 日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出

 

 

図1引き続き割安感が強い。しかし、予想EPSのトレンドがやや弱含みで有ることが懸念材料。

 

 

図2来期予想ベースのプラス企業比率は、 67.0%→44.7%→44.6%→43.4%→45.1%。
再来期予想ベースのプラス企業比率は、57.6%→44.1%→48.2%→48.5%→49.7%。

業績見通しは自動車・海運・電機などが弱含み傾向。

[注:4~5月は例年、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]

 

 

出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2012年1月から表示

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り

 

株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。