5月27日妥当レンジ 16,800円~18,150円
米利上げ期待から目先は円安・株高の展開
【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】
<国内外の経済指標発表が集中する週>
■伊勢志摩サミット(26-27日)においては波乱はなく、世界経済の減速阻止策を柱とした首脳宣言が採択された。先週のマーケットは、27日のイエレンFRB議長の「おそらく数ヵ月の間に利上げが適切になるだろう」との発言から、6月あるいは7月のFOMCでの利上げ観測が台頭したこと、消費増税延期に関する報道等から円安・株高に推移している。
■今週は、国内外での経済指標の発表が集中するとともに、国会会期末(6/1)を迎えて、消費増税延期と衆院解散の有無が焦点となりそうである。31日:鉱工業生産、家計調査、完全失業率、有効求人倍率、6月1日:米ISM製造業景気指数、ベージュブック、中国財新PMI、OECD世界経済見通し、2日:ECB理事会、米ADP雇用統計、3日:米雇用統計、ISM非製造業景気指数、が予定されている。
■6/14-15のFOMCでの、米利上げに対する期待が高まるようであれば、ドル高(円安)を受けて日本株はさらに上伸する可能性があるが、NY株式市場並びに人民元の動きにはやや注意が必要であろう。30日に人民元は5年3ヵ月ぶりの安値となる6.58元/ドルに下落した。また、気になるのが、25日に米国務省がヒラリー・クリントン氏の国務長官時代の公務での私用メール使用を規則違反とした報告書を提出したこと。トランプ氏の発言がこれまで以上に影響を及ぼしそうである。
<コンセンサス予想EPSは再来期がプラスであるが>
■5月27日時点のIFIS/TIWコンセンサス225(日経225のコンセンサスEPS)は、今期・来期がマイナス、再来期がプラスとなった。しかし、来期・再来期は特定銘柄(ソフトバンク)の影響から押し上げられており、必ずしも見通しが良化したとは言えない。コンセンサスEPSがプラスになった企業の比率は前週同様に、来期・再来期ともに50%を下回る状態にある。まだ当分の間は方向感のない状態が続きそうである。
■為替が円安に動いていることで輸出関連企業の株価が出直りつつある。消費増税延期から小売・サービス銘柄も底堅く推移している。大型株の戻りが期待できそうである。
◇日経平均妥当水準(レンジ)
16,800円~18,150円 | (前回16,800円~18,150円) |
*「IFIS/TIWコンセンサス225」(5月27日)来期予想ベースEPSをもとに算出
◇IFIS/TIWコンセンサス225(5月27日)
今期予想EPS | 1004.62円 | (前週 1017.93円) |
来期予想EPS | 1100.95円 | (前週 1106.33円) |
再来期予想EPS | 1188.12円 | (前週 1175.91円) |
今期予想PER | 16.76倍 | (前週 16.44倍) |
来期予想PER | 15.29倍 | (前週 15.13倍) |
再来期予想PER | 14.17倍 | (前週 14.23倍) |
来期予想PBR | 1.10倍 | (前週 1.09倍) |
来期予想ROE | 7.18% | (前週 7.18%) |
来期予想 インプライド・リスク・プレミアム |
7.11% | (前週 7.12%) |
*5月27 日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出
引き続き割安感が強く、米経済指標の内容によっては株価はさらに上伸する可能性が強い。
来期予想ベースのプラス企業比率は、 56.5%→35.1%→67.0%→44.7%→44.6%。
再来期予想ベースのプラス企業比率は、59.3%→42.4%→57.6%→44.1%→48.2%。
業績見通しにはまだ不安が残る。
[注:4~5月は例年、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]
方向感がまだ定まらない状態。
PERでは極端な割安感は無くなった。
出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2012年1月から表示
「IFIS/TIWコンセンサス225」について IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。 理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。 4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。 〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕 会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。 〔予想EPS増減社数〕 今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。 〔予想PBR(今期末)〕 前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。 〔予想ROE(来期ベース)〕 前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。 〔リスクプレミアム〕 特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り |