4月28日妥当レンジ 16,050円~17,350円
厳しい決算、悪抜け後も上値は限定的か?

2016/05/06

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

 

<日銀緩和見送り、円高・株安懸念強まる>
■28日の日銀金融政策決定会合では、追加緩和が見送られた。そのため、何らかの緩和策実施を見込んでいたことから大幅下落となった。1-3月の米GDP(28日、一次速報)が+0.5%と市場予想(+0.7%)を下回ったこと、米外国為替報告書において監視リストに5カ国(日本、ドイツ、中国、韓国、台湾)が指定されたことも有り、為替は一気にドル安が進んだ。
■28日に発表された国内統計は、家計調査(3月・2人以上世帯の消費支出)前年同期比▲5.3%、全国消費者物価(3月・コア)前月比▲0.3%、と日本経済が依然として停滞している状況を示す内容であった。
■中国経済も4月の国家統計局PMIが50.1(市場予想50.4・3月50.2)、財新PMIが49.4(市場予想49.9・3月49.7)と奮わない。しかし、米国は、4月のISM製造業景気指数(2日発表)は50.8(市場予想51.4・3月51.8)と前月より1ポイント低下したが、輸出受注は良好に推移。ISM非製造業景気指数は、55.7と3月の54.5から大幅に上昇し、経済環境の好調さを示した。
■6月の米利上げに関しては、今後発表される経済統計次第ではあるが、次回のFOMC(6/14-15)がEU離脱を問う英国民投票(6/23)の直前に位置することから見送られる可能性も指摘されている。
■目先的には、企業決算を織り込みつつ底値固めが予想されるものの、米雇用統計(5/6)によっては一段と円高が進行することも懸念される。また、今後は、消費増税の延期の有無が大きな焦点になるだろう。伊勢志摩サミット(5/26-27)前後で増税延期を視野に再び投機的な動きが生じることも考えられる。いずれにしても企業業績予想(EPS)の水準と予想ROEの低下から悪抜けしても上値は限定されることが予想される。

 

<コンセンサス予想EPSは今期・再来期がプラスであるが>
■4月28日時点のIFIS/TIWコンセンサス225(日経225のコンセンサスEPS)は、今期・再来期ベースが対象決算期変更に伴ってプラスとなったが、来期ベースは減少した。まだ、3月期決算企業の3分の1程度が決算発表を行った段階であるが、過去3年と比較して著しく弱い状況である。

 

◇日経平均妥当水準(レンジ)

16,050円~17,350円 (前回16,800円~18,150円)

*「IFIS/TIWコンセンサス225」(4月28日)来期予想ベースEPSをもとに算出

◇IFIS/TIWコンセンサス225(4月28日)

今期予想EPS 926.95 (前週 909.92円)
来期予想EPS 1081.20 (前週 1084.62円)
再来期予想EPS 1180.40 (前週 1163.96円)
今期予想PER 17.98 (前週 19.31倍)
来期予想PER 15.41 (前週 16.20倍)
再来期予想PER 14.12 (前週 15.10倍)
来期予想PBR 1.06 (前週 1.12倍)
来期予想ROE 6.85% 前週 6.94%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
6.83% (前週 6.82%)

*4月28 日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出

 

 

図1
2日の下落を加味すれば下限水準であるが、コンセンサス予想EPSはまだ下ブレする余地が強く残っている。

 

図2来期予想ベースのプラス企業比率は、 41.4%→43.4%→39.6%→33.3%→56.5%。
再来期予想ベースのプラス企業比率は、40.7%→40.6%→25.3%→37.3%→59.3%。

プラス比率の上昇は対象決算期の変更によるもの。前年、前々年の水準と比較すればかなり低い。

[注:4~5月は例年、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]

 

図3決算期変更を迎えての変化率が低い。

 

図4コンセンサス予想EPSの(対象決算期変更を迎えて)伸び悩みと同時に、予想ROEの低下を鑑みるとバリュエーションの低下は避けられない。

 

出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2012年1月から表示

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り

 

株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
TIWマガジン「投資の眼」   株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。

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