2月6日妥当レンジ 16,800円~18,150円
予想EPSの減少トレンドは一旦緩むと思われるが

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

<再び円高局面に>
■日銀のマイナス金利導入は為替の安定に一定の効果がある、という旨を前回レポートで述べたが、残念ながら非常に短命なものとなった。1)公表される米国経済指標が芳しくなく、米国のリセッションの可能性が指摘され始めてきた。米長期金利は1月末の2.10%から昨日は1.72%にまで低下している。2)日銀の当座預金残高260兆円の内、マイナス金利が適用されるのは10兆円に過ぎず(3日に日銀が公表)、国内金融機関に配慮したものであること=緩和効果は限定的との見方が強まっている。3)中国の外貨準備高は1月に995億ドル(12月は1,079億ドル)減少しており、将来の人民元切下げの可能性が高まっている。4)北朝鮮の弾道ミサイル実験によって地政学的リスクが増加した。5)2015年の日本の経常収支黒字は16兆6,413億円と前年の6.3倍の水準に拡大しており、実需面からの円高圧力も予想される。
■国内経済統計も芳しくない。12月の景気動向指数(2/5発表)は、一致が前月差▲0.7ポイント、先行が同▲1.2ポイント。1月の貿易統計上中旬分(2/5発表)は輸出が前年同月比▲9.6%。4ヵ月連続で輸出がマイナスとなることが濃厚になった。1月の景気ウォッチャー調査は、現状判断DIが46.6(前月比▲2.1ポイント)、先行き判断DIは前月比プラスであったが季節要因が大きく季節調整値ではマイナスであった。

 

<業績見通しはまだまだ厳しい>
■2月5日時点のIFIS/TIWコンセンサス225(日経225のコンセンサスEPS)は、5週続けて全期間マイナスであった。前週比で予想EPSがプラスになった銘柄の比率は、44.7%(来期ベース・変化なし銘柄を除く)と前週からやや改善したものの、5週連続50を下回っている。決算一巡後は予想EPSの減少レンドは一旦緩むと思われるが、国内・海外経済がまだ下方トレンドにある中では、新年度に向けて再び減少トレンドが強まる可能性もある。
■現状の株価水準は妥当レンジ下限近辺であるために、一時的に反発する局面もあると思われるが、ここは配当利回り重視で守備に徹する時間帯と考える。

 

 

◇日経平均妥当水準(レンジ)

16,800円~18,150円 (前回17,200円~18,550円)

*「IFIS/TIWコンセンサス225」(2月6日)来期予想ベースEPSをもとに算出

◇IFIS/TIWコンセンサス225(2月6日)

今期予想EPS 988.15 (前週 1000.18円)
来期予想EPS 1110.56 (前週 1115.20円)
再来期予想EPS 1212.57 (前週 1215.11円)
今期予想PER 17.02 (前週 17.52倍)
来期予想PER 15.15 (前週 15.71倍)
再来期予想PER 13.87 (前週 14.42倍)
来期予想PBR 1.09 (前週 1.14倍)
来期予想ROE 7.19% 前週 7.23%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
6.99% (前週 6.87%)

*2月6 日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出

 

 

図1現状の株価はレンジ下限付近であるが、予想EPSの減少トレンドから下方にシフトする可能性が強く残る

 

図2来期予想ベースのプラス企業比率は、 41.1%→31.9%→44.4%→38.2%→44.7%。
再来期予想ベースのプラス企業比率は、38.5%→35.2%→47.9%→36.8%→42.9%。

底打ちにはまだ2週間ある

[注:4~5月は例年、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]

 

 

図3今期予想EPS(コンセンサス)は1000円を割れて988円に


 

 図412ヵ月フォワード予想ベースのPERではボトムに近づく


 

出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2012年1月から表示

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り

 

株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。