12月25日妥当レンジ 17,750円~19,150円
国内経済・株価ともに目先は低空飛行が続く

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

<ぱっとしない国内経済指標>
■11月の全国百貨店売上(18日発表)は▲2.7%(店舗調整後・前年同月比)、チェーンストア販売統計(21日発表)は▲1.0%(同)、いずれも8ヵ月ぶりのマイナス。11月の家計調査・実質消費支出(25日発表)は▲2.9%(前年同月比)と消費関係の経済指標が低迷している。
■11月の鉱工業生産(28日発表)は前月比▲1.0%と3ヵ月ぶりマイナス。汎用・生産用・業務用機械、輸送用機械、電子部品・デバイスなどのマイナスが目立った。
■11月の全国消費者物価指数は、コア(生鮮食品を除く総合)が+0.1%(前年同月比)と5ヵ月ぶりにプラスとなったが、食品の影響が強く、決してポジティブな内容ではない。
■国内経済の回復感が極めて弱い中で、今後も海外経済指標と為替に強く影響を受けるマーケット展開が予想される。年内は主だった海外経済指標の発表がないこと、年明け後は8日の米雇用統計待ちから、方向感の無いマーケット展開が暫く続くと考える。
■年明けの主な海外指標発表は、4日:中国 財新PMI製造業(12月)、米ISM製造業景気指数(12月)、6日:米ISM非製造業景気指数(12月)、米FOMC議事録、8日:米雇用統計。

 

<今期予想の下方トレンドに注意>
■12月25日時点のIFIS/TIWコンセンサス225(日経225のコンセンサスEPS)は、今期ベースはマイナスとなったものの、来期・再来期ベースは僅かながらプラスであった。今期が大きくマイナスとなったのは東芝(6502)、キリンHD(2503)の赤字が主要因。ただし、この2社を除いても商社などマイナスが目立っており、今期業績に対する下ブレの可能性が出てきている。東証1部全体の予想EPS(日経新聞のPER、PBR、時価総額、発行済み株数等から推算)も大きく低下しており、これが足もとの株価低迷の背景とも考えられる。
■引き続き、積極的に株価が上昇する材料は見当たらず、19,000円を下回る低空飛行状態が続くと考える。

 

◇日経平均妥当水準(レンジ)

17,750円~19,150円 (前回17,900円~19,250円)

*「IFIS/TIWコンセンサス225」(12月25日)来期予想ベースEPSをもとに算出

◇IFIS/TIWコンセンサス225(12月25日)

今期予想EPS 1015.08 (前週 1023.44円)
来期予想EPS 1129.28 (前週 1128.79円)
再来期予想EPS 1232.13 (前週 1230.76円)
今期予想PER 18.49 (前週 18.55倍)
来期予想PER 16.62 (前週 16.82倍)
再来期予想PER 15.23 (前週 15.43倍)
来期予想PBR 1.21 (前週 1.22倍)
来期予想ROE 7.29% 前週 7.25%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
6.63% (前週 6.59%)

*12月25 日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出

 

図1株価は下落したものの妥当レンジの中位よりは上の水準で特段割安感は無い。

図2来期予想ベースのプラス企業比率は、 54.2%→49.7%→47.4%→43.7%→51.2%。
再来期予想ベースのプラス企業比率は、53.4%→41.1%→57.3%→39.8%→48.8%。

プラス企業比率の改善はまだ弱い

[注:4~5月は例年、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]

 

図3今期予想コンセンサスEPSが低下トレンド続く。

 

図4
今期予想ROE(日経新聞からの計算値)が急速に低下。
一時的なイレギュラー??

 

 

出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2012年1月から表示

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り
株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。