11月6日妥当レンジ 18,050円~19,450円
生産・貿易関係の統計に注意、利食い千人力を心がけよ

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

<やはり懸念される中国及びアジアの影響>
■10月28日の米FOMC以降、日本株は好調である。郵政3社のIPO(4日)、米雇用統計発表(6日)と追い風が続いている。好調なマーケットに隠れて、あまり強くは意識されていないものの、懸念材料も少なくはない。
■8日発表の中国の貿易統計(10月)は輸出(ドルベース)▲6.9%、輸入▲18.8%、輸出入合計は8ヵ月連続で前年同月を下回っている。10日発表の中国CPI(10月)は、前年同月比+1.3%、9月(1.6%)より伸びが鈍化している。
■9日にOECD(経済協力開発機構)は、世界経済見通しを下方修正した。世界全体では、2015年:3.0%→2.9%、2016年:3.6%→3.3%。日本は2015年は0.6%で据え置かれたものの、2016年は1.2%→1.0%へと引き下げられた。
■国内統計は、消費者態度指数(10月・11/4発表)が41.5と前月比+0.9ポイントと2ヵ月ぶりに上昇。景気ウオッチャー調査(10月・11/10発表)が現状判断DIが48.2と前月比0.7ポイント上昇した。ただし、貿易統計10月上中旬分速報は前年同月比で輸出▲1.8%、輸入▲6.5%。輸出が依然として厳しいことを感じさせている。
■中国やアジア関係の軟調な経済は、国内の生産・貿易関係の統計に表れ易い。12日:機械受注統計(9月)、19日:貿易統計(10月)、30日:鉱工業生産指数、には注意したい。

 

<コンセンサス予想EPSは前週比マイナスが続く>
■11月6日時点のIFIS/TIWコンセンサス225(日経225のコンセンサスEPS)は、全期間でマイナスであった。ただし、前週比プラス企業数の割合は来期ベースが2週連続で50%台。しかし、再来期ベースは引き続き50%割れが続いている。
■期待収益率(来期ベース)で見るとレッドゾーンに近くなって来た。郵政を利食った次の銘柄探しの展開ではあるものの、深追いはリスクを覚悟で。2万円に近づく水準では“利食い千人力”を心がけたい。

 

 

◇日経平均妥当水準(レンジ)

18,050円~19,450円 (前回18,100円~19,500円)

*「IFIS/TIWコンセンサス225」(11月6日)来期予想ベースEPSをもとに算出

 

◇IFIS/TIWコンセンサス225(11月6日)

今期予想EPS 1044.88 (前週 1048.02円)
来期予想EPS 1130.10 (前週 1135.60円)
再来期予想EPS 1227.38 (前週 1231.88円)
今期予想PER 18.44 (前週 18.21倍)
来期予想PER 17.05 (前週 16.80倍)
再来期予想PER 15.70 (前週 15.49倍)
来期予想PBR 1.25 (前週 1.24倍)
来期予想ROE 7.31% 前週 7.36%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
6.56% (前週 6.63%)

*11月6日 日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出

 

 

図1

妥当レンジは小幅に低下、その結果、上限に近づいている(11/10現在では上限より上)。

 

図2来期予想ベースのプラス企業比率は、 44.1%→36.9%→45.6%→51.8%→50.4%。
再来期予想ベースのプラス企業比率は、39.6%→32.0%→35.6%→44.0%→47.2%。

来期予想ベースでは50%台をキープ。しかし、再来期ベースは11週連続50%割れ。

[注:4~5月は例年、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]

 

図3 
期待収益率は、リーマンショック以降で最低水準に。

 

図4コンセンサス予想は、今期予想は5月時点を上回るものの、来期・再来期予想では下回る。

 

出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2012年1月から表示

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り
株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。