米国市場とドル高が支える自動車株  -高田 悟-

16/3期の上期決算発表が本格化している。自動車関連は27日の日野自動車を皮切りに三菱自動車の決算発表が続いた。また、同日、マツダが上期着地予想の上ぶれを発表した。その後、ショーワ、小糸製作所と一部サプライヤーの業績発表が終わった。まだ一部に止まるが上期は概ね増益となり、会社計画以上で着地している。一方で上期計画超過達成にも関わらず、通期計画は据え置く。あるいは通期計画を上方修正しても上方修正額を上期計画上ぶれ額の範囲内に止めるケースがほとんどである。トヨタなど大手を含め自動車関連は決算発表のピークを来週迎えるが、おそらく同様の傾向が続くだろう。

1)国内で消費増税、軽自動車税引き上げ、数回に及ぶ需要喚起策による需要の先食いから販売、生産が低迷した。2)比重の高い東南アジアは景気悪化によりタイ、インドネシアなど主要市場で需要低迷が続いた。3)中国は決算期のずれにより6月までの状況を反映するケースがほとんどでこの時点では悪化が顕在化していない。4)一方で日系最大市場の北米が頗る好調で、国内、東南アジアでの販売台数減少影響をカバーした。5)さらには、新興国通貨安の現地生産コスト増への影響や換算悪化影響を十分吸収してなお余る、対米ドルでの円安効果が追い風になった。整理すると上期決算においては米国販売好調と円安/ドル高で何とか増益を確保しているという共通の構図が浮かびあがる。

7月以降世界最大の中国自動車市場の鈍化が目だっている。幸い日系は中国では売れ筋のSUV系新型車が総じて好調でそれほど悪化が顕在化していない。しかし、いつまでも堅調が続くとは限らない。政府が小型車取得税減税を導入したが期間が一年3カ月と長く、すぐに猛烈な効果があがりそうにない。中国景気悪化からが日系牙城の東南アジアで需要低迷が長引く。米国市場は好調だが、歴史的にもピークの水準に既にあり一部経済指標から景気回復の持続性に懸念も出始めている。影響は限定的とはいえ自動車市場回復基調の欧州景気への懸念も原油安、難民にフォルクスワーゲン問題などが重なり足下で高まっている。

詰まるところ、景気堅調および原油安による米国自動車市場の好調とドル高/円安が業績を支ええている。米国景気回復が崩れ、市場は悪化、利上げ見送り、低金利長期化、安全資産円への回帰となったらどうなるのだろう。そんな思いが通期計画据え置きの理由の1つにあるのだろう。リーマンショックを忘れることができない。また忘れてはならない。当時に比べれば現地生産、調達の拡大など、生産面での体質強化により円高への抵抗力は飛躍的に高まっている。とはいえ、当時のように新興国という救済主はもういない。8月の中国ショックから世界的な金融緩和傾向の中、自動車関連の株価は戻り始めた。足もとは上期決算好調を受け確りしているが、株価が本格上昇に向かうにはまだ時間がかかりそうだ。

株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
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