8月14日妥当レンジ 19,400円~20,900円
引き続き、押し目待ちの時間

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

<人民元切り下げの影響は一服したが>
■先週は、中国人民銀行による元切り下げにより、マーケットは混乱したが、3回の切り下げの後に一巡し、現状ではほぼ収束している。これは中国が求めている人民元のSDRへの組み入れに対して、IMFが「為替レートの決定方式が不透明」として見送ったことに対する「基準値」の見直しと説明されている。しかしながら、市場では中国経済は為替を切り下げなければならないほど困窮しているとの見方も広がっており、それが商品市況の下落に拍車をかけている。今後も注視が必要であろう。
■12日に起きた中国・天津の大規模な爆発は死者114人に達した。トヨタ自動車をはじめ日系企業にも影響が出ており、復旧が長期化する懸念も出ている。また、17日にはタイの首都バンコクにおいて爆弾テロが発生した。
■米国では、住宅関係の経済指標も好調であり、利上げの可能性が高まっているが、米10年国債利回りの低下に見られるように資金の米国への回帰・逃避が生じており、利上げ後の新興国経済への影響など引き続き注意が必要な状態にある。
■国内は、17日に発表された4-6月のGDPが実質年率換算で1.6%減となった。しかし、事前予想ほどは悪くなかったとことや民間調査機関(10社)で7-9月はプラスとなると見ていることから市場への影響は殆ど無かった。ただし、消費者態度指数や景気ウオッチャー調査など消費関連の調査結果は決して先行き明るいものではない。

 

<コンセンサス予想EPSは全期間プラスだが>
■14日時点のIFIS/TIWコンセンサス225(日経225のコンセンサスEPS)は、全期間(今期・来期・再来期)でプラスであったが、特定銘柄(KDDI)の影響が強く表れました。前週比プラス企業数の割合は、来期ベースが48.2%、再来期ベースが50.4%とプラスマイナスが拮抗した状態にある。日経平均株価も妥当レンジ上限に近い位置にあり、海外情勢等を勘案すれば上値には限界があると考える。引き続き、押し目待ちの時間と考える。

 

 

◇日経平均妥当水準(レンジ)

19,400円~20,900円 (前回19,300円~20,900円)

*「IFIS/TIWコンセンサス225」(8月14日)来期予想ベースEPSをもとに算出

 

◇IFIS/TIWコンセンサス225(8月14日)

今期予想EPS 1054.63 (前週 1053.78円)
来期予想EPS 1158.95 (前週 1156.33円)
再来期予想EPS 1264.38 (前週 1260.24円)
今期予想PER 19.46 (前週 19.67倍)
来期予想PER 17.71 (前週 17.92倍)
再来期予想PER 16.23 (前週 16.44倍)
来期予想PBR 1.34 (前週 1.35倍)
来期予想ROE 7.56% 前週 7.53%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
6.61% (前週 6.53%)

*8月14日 日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出

 

 

図1 
レンジ上限に近く、警戒が必要

 

 

図2

来期予想ベースのプラス企業比率は、45.0%→45.0%→48.1%→51.5%→48.2%。
再来期予想ベースのプラス企業比率は、51.1%→53.4%→49.5%→53.8%→50.4%。

来期ベースは再び50%割れ。

 

[注:4~5月は例年、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]

 

出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2012年1月から表示

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り
株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。