6月26日妥当レンジ 19,300円~20,750円
欧米市場は大崩れなし、米雇用統計を視野に切り返す

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

<ギリシャ国民投票までECBはELAを継続>
■27日、ギリシャのチプラス首相による国民投票実施(5日)の発表からEUなど債権者との交渉が破談。ギリシャのデフォルト・ユーロ離脱の可能性が高まったとして、週明け29日の東京市場では円高・ユーロ安・株安となった。日経平均株価は、596.2円下落し(-2.88%)、20,109.95円で引けた。
■欧米市場では、DAX指数は3.56%下落したものの、NYダウは1.95%の下落に留まった。ユーロドルは1.10ドル割れから1.125ドルまで反転した。ECBがELA(緊急流動性支援)を国民投票が行われる5日まで継続する見通しが伝えられたことや、欧州各国首脳が交渉に戻ることを呼びかけ、ギリシャ国民に向けて救済条件となる10項目が開示されていることなど、が好感されたと考えられる。
■30日の期限切れまでは時間的猶予が無い状態であるものの、銀行が休業に追い込まれたことによってギリシャ国民の危機感は強まっており、メディアのアンケートでは財政再建案への賛成が反対を大きく上回っている。予断は許せないが、国民投票での再建案への受け入れの可能性が強まっている。
■6月の米雇用統計は2日(木)に発表される予定であるが、非農業部門雇用者数が市場予想(23万人増)に対して大きく上回れば9月利上げ予想が強まることが見込まれる。ギリシャ危機でドル円は122円台まで上昇したが、円安への戻りも予想されよう。
■26日に発表された5月の国内消費支出は実質4.8%増となり14カ月ぶりの増加となった。全国消費者物価指数(コア)は前年同月比0.1%上昇、有効求人倍率も23年ぶりに1.19倍となり、日本経済の回復が統計数字に出始めている。

 

<コンセンサス予想EPSは3週連続で全期間プラス>
■26日時点のIFIS/TIWコンセンサス225(日経225のコンセンサスEPS)は、僅かではあるが全期間(今期・来期・再来期)でプラスになった。今回の妥当レンジは、上方に修正する。ギリシャ債務問題が最悪の結果に陥らない限り、日本株は大きく反発する可能性が強いと考える。

◇日経平均妥当水準(レンジ)

19,300円~20,750円 (前回 19,000円~20,450円)

*「IFIS/TIWコンセンサス225」(6月26日)来期予想ベースEPSをもとに算出

◇IFIS/TIWコンセンサス225(6月26日)

今期予想EPS 1055.47 (前週 1055.20円)
来期予想EPS 1168.20 (前週 1167.40円)
再来期予想EPS 1264.80 (前週 1264.60円)
今期予想PER 19.62 (前週 19.12倍)
来期予想PER 17.72 (前週 17.28倍)
再来期予想PER 16.37 (前週 15.95倍)
来期予想PBR 1.34 (前週 1.30倍)
来期予想ROE 7.56% 前週 7.53%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
6.51% (前週 6.59%)

*6月26日 日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出

 

 TIW1


29日(月)の下落を考慮すれば、妥当レンジの中位水準。割安感が台頭している。

 

TIW2

来期予想ベースのプラス企業比率は、53.3%→56.1%→65.1%→64.7%→59.1%。
再来期予想ベースのプラス企業比率は、57.6%→53.5%→62.6%→56.1%→53.8。

来期ベースではプラス比率を堅持しており、株価の上昇基調は崩れていない。

[注:4~5月は例年、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]

 

 出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2012年1月から表示

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り
株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。