6月19日妥当レンジ 19,000円~20,450円
ギリシャ・ユーロ合意から一旦は上離れへ

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

<ギリシャによる再提案に前向きな反応>
■22日のユーロ圏財務相会合の直前にギリシャ政府から新提案が提出された。(ロイターに拠れば)ユーログループのデイセルブルム議長は、改革案は前向きな措置とし、週内の合意に向けた土台となる可能性があるとの認識を示しており、週内にも再び財務省会合が召集される見通しである。この報道を受けて、ユーロドルは上昇、欧米の株式市場も好反応を示している。
■17日の米FOMCにおいては、利上げ開始時期について「年内が適切」しつつも、利上げペースが穏やかになる可能性が示唆された。
■日銀金融政策決定会合後の記者会見(19日)において、黒田総裁は、円安進行は金融政策運営の制約要因にはならないと強調した。10日の国会発言が円安に対する牽制と受け止めらたことを否定した形になる。現状の政策に変更が無いことが強調されたことは株式市場にとってポジティブに受け止められる。

 

<コンセンサス予想EPSは2週連続で全期間プラス>
■19日時点のIFIS/TIWコンセンサス225(日経225のコンセンサスEPS)は、全期間(今期・来期・再来期)でプラスになった。妥当レンジは、微調整する。
■コンセンサス予想EPSの上昇トレンドが続いている。多少の金利上昇があっても、国内外の経済環境が好転する環境下ではリスクプレミアムの縮小が期待できるだけに妥当レンジの上限近くの株価水準が維持されると考える。
■ギリシャ債務問題が決着すれば、ユーロドルの上昇(ユーロ高)が予想される。米利上げに向けた環境がまた一歩前進する。日銀が緩和策を継続することによって、(どちらかと言えば)円安トレンドが生じやすいと考えられ、輸出株の巻き返しが期待される。一旦は売りポジションの整理が進むことから全般的な株価上昇が見込めるだろう。
 

◇日経平均妥当水準(レンジ)

19,000円~20,450円 (前回 19,050円~20,500円)

*「IFIS/TIWコンセンサス225」(6月19日)来期予想ベースEPSをもとに算出

 

◇IFIS/TIWコンセンサス225(6月19日)

今期予想EPS 1055.20 (前週 1049.86円)
来期予想EPS 1167.40 (前週 1164.25円)
再来期予想EPS 1264.60 (前週 1263.68円)
今期予想PER 19.12 (前週 19.44倍)
来期予想PER 17.28 (前週 17.53倍)
再来期予想PER 15.95 (前週 16.15倍)
来期予想PBR 1.30 (前週 1.33倍)
来期予想ROE 7.53% 前週 7.59%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
6.59% (前週 6.52%)

*6月19日 日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出

 

 

 図1
コンセンサス予想EPSのプラス傾向が顕著な状態ではレンジ上限付近の株価水準が維持されるか?

 

 

図2
来期予想ベースのプラス企業比率は、55.1%→53.3%→56.1%→65.1%→64.7%。
再来期予想ベースのプラス企業比率は、52.4%→57.6%→53.5%→62.6%→56.1%。
来期ベースでは高いプラス比率を堅持しており株価の基調は強い。

 

[注:4~5月は例年、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]

 

  
図3割安感は見られないが、危険水準にはないレベルで推移。

 

図4
注:日経平均倍率は上下逆に表示(下が割安・上が割高)。
日経ジャスダック平均は底値圏から大きく上昇したが、未だ過去3年の平均水準を下回っており、上昇余地がある。

 

 

 出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2012年1月から表示

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り
株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。