5月29日妥当レンジ 19,450円~20,950円
不況下の株高に似た現象から、上昇トレンドは続く??

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

<経済指標は国内外共にまだら模様>
■6月1日時点で日経平均株価は12連騰となった。株価調整を予想するストラテジストも少なくない中、嘲笑うように上昇が続いている。株価の上昇ピッチが速いこと、バリュエーション面での魅力が薄らいでいること、海外市場がやや崩れていることから、下落しても不思議ではないが、上昇基調は続く可能性も少なくはないと考え始めている。不況下の株高に似た現象として、世界的にまだら模様の景況感、商品市況の停滞、低金利の継続によって、株式への資金流入が持続する可能性が考えられる。
■5月29日に米1-3月GDPは、速報値の0.2%増から0.7%減(前期比・年率換算)に改定された。港湾ストライキで輸出に影響が出たことや海外生産増による輸入拡大が要因。市場予想の範囲であり、一時的との見方も強い。5日に米雇用統計(5月)の発表が予定されているが、非農業部門雇用者数は4月(22.3万人)と同水準が見込まれている。
■4月の国内の失業率は3.3%と18年ぶりの低水準。有効求人倍率も1.17倍と前月から0.02ポイント上昇した。ただし、家計支出は前年同月比1.3%(実質)減少した(2人以上世帯の消費支出)。消費者物価指数は前年同月比0.3&上昇したが、(前年の公共料金の経過処置等)増税の影響を除くと実質横ばいであった。

 

<コンセンサス予想EPSは全期間プラス>
■29日時点のIFIS/TIWコンセンサス225(日経225のコンセンサスEPS)は、全期間において前週比プラスとなった。今回は、日経平均の妥当レンジを大きく引き上げる(予想EPSの増加、基準となる1株純資産の減少、長期金利の低下による)。
■米国の利上げが株高に対する最大の阻害要因であるが、米国経済指標はまだら模様であることや、ドル高の進行などから利上げ時期は後ろ倒しになる可能性が強いと思われる。ドル高(円安)に振れやすい環境下では自動車など輸出関連銘柄に注目したい。
 

◇日経平均妥当水準(レンジ)

19,450円~20,950円 (前回 19,050円~20,550円)

*「IFIS/TIWコンセンサス225」(5月29日)来期予想ベースEPSをもとに算出

 

◇IFIS/TIWコンセンサス225(5月29日)

今期予想EPS 1040.27 (前週 1036.00円)
来期予想EPS 1158.61 (前週 1156.03円)
再来期予想EPS 1255.22 (前週 1243.85円)
今期予想PER 19.77 (前週 19.56倍)
来期予想PER 17.75 (前週 17.53倍)
再来期予想PER 16.38 (前週 16.29倍)
来期予想PBR 1.35 (前週 1.32倍)
来期予想ROE 7.60% 前週 7.54%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
6.62% (前週 6.58%)

*5月29日 日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出

 

 

 図1妥当レンジは、予想EPSの増加、実績BPSの減少、長期金利の低下から上方にシフト。妥当レンジの上限に近いが、モメンタムの上昇トレンドが続く可能性もある。ただし、水準的には警戒は必要。

 

 

図2いずれも3月最終週と5月末(または6月頭)との比較。
2015年は最終的にはほぼ従前(3月末時点)の市場予想のEPS水準を確保。

 

決算発表前の「来期」は発表後の「今期」(同様に発表前の「再来期」は発表後の「来期」)である。発表前に対する発表後の進捗率は、来期ベースでは前年を上回った。

 

 図3 
インプライド・リスク・プレミアムで見れば、まだ株価上昇余地がある。しかし、期待収益率では危険水準。鍵を握るのが金利。米国長期金利の変化に要注意(=米国金利が上がる局面では国内長期金利も引っ張られる)。

 

図4    
来期予想ベースのプラス企業比率は、71.8%→61.9%→74.1%→55.1%→53.3%。
再来期予想ベースのプラス企業比率は、65.3%→59.5%→64.0%→52.4%→57.6%。
予想EPSの対象決算期の移行による増加はひと段落したが、緩やかなプラス続くか?
 

[注:4~5月は例年、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]

 

 

 出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2012年1月から表示

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り
株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。