3月13日妥当レンジ 18,300円~19,700円
FOMCに揺れる展開か? 割安感は薄らいでいる

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

<ユーロの下落が続く中、欧州株が上昇>
■ユーロの量的金融緩和の具体化と米雇用統計発表(2月)からの流れを受けてユーロ/ドルの下落が続いている。6日時点の1.10ユーロ/ドルから13日には一時的に1.05ユーロ/ドルを割り込むところまで下落した。金融緩和効果から欧州株(DAX)は上昇が続く。日本株も金融緩和継続が前提にあって、景気回復期待と政策的な日本株への投資拡大を見込んだ上昇が続く。
■FRBによる利上げ時期が模索される米国株においては、ドル高、金利上昇の中、株価が冴えない。17-18日に予定されているFOMCで「忍耐強く」の表現が外れるかどうかが焦点となっている。表現が外れれば6月利上げの可能性が高いと市場では目されており、短期的には為替も株価もFOMCに揺れる展開と思われる( 「忍耐強く」が外れなかった場合は円高となるが、日本株は単純に売られるのではなく、米国景気加速を好感してプラスとなる可能性も考えられる)。

 

<コンセンサス予想EPSは、全期間で前週比プラス>
■3月13日時点の、IFIS/TIWコンセンサス225(日経225のコンセンサスEPS)は、僅かであるが前週比で全期間がプラスとなった。前週比予想EPSがプラスとなった企業の比率は、全期間において60%台と急回復した。
■13日現在の12ヵ月移動平均ベースの妥当レンジは19,170円~20,650円であり、 レンジ下限を漸く株価が上回ってきた。2ヵ月後に到来する対象決算期の移行を考慮すれば、引き続き、押し目は強気で臨むスタンスを堅持すべきであろう。ただ、以前のように「明らかな割安」状態ではなくなってきているので、何らかの切っ掛けで短期的に調整する可能性があることは頭の片隅には置いておきたい。

 

◇日経平均妥当水準(レンジ)

18,300円~19,700円 (前回 18,200円~19,600円)

*「IFIS/TIWコンセンサス225」(3月13日)来期予想ベースEPSをもとに算出

◇IFIS/TIWコンセンサス225(3月13日)

今期予想EPS 925.43 (前週 925.40円)
来期予想EPS 1052.65 (前週 1050.47円)
再来期予想EPS 1155.38 (前週 1152.19円)
今期予想PER 20.81 (前週 20.50倍)
来期予想PER 18.29 (前週 18.06倍)
再来期予想PER 16.66 (前週 16.47倍)
来期予想PBR 1.42 (前週 1.41倍)
来期予想ROE 7.74% 前週 7.78%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
6.65% (前週 6.72%)

*3月13日 日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出

 

図1

12ヵ月移動平均で見た場合の妥当レンジは、19,170円~20,650円。足元の株価は移動平均レンジの下限を上回ってきており、割安感は薄らいできている。 

図2

来期予想ベースのプラス企業比率は、51.0%→50.0%→47.9%→43.2%→63.2%。
再来期予想ベースのプラス企業比率は、53.9%→56.2%→49.4%→46.6%→65.3%。
来期・再来期ともに50%超に急回復。

[注:4~5月は例年、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意] 

出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2012年1月から表示

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り
株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。