12月6日妥当レンジ 17,500円~20,350円
輸出型・内需型で二極分化が進むが、全体は上昇基調

2014/12/09

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

<円安・金融緩和路線は当面変化なしか>
■5日発表の11月の米雇用統計は、非農業部門雇用者数は前月比で32.1万人増と市場予想(23万人増)を大きく上回り、NYダウは史上高値を更新して18,000ドルに迫る展開となった。
■8日に発表された7-9月のGDP改定値は、法人統計からプラス方向への修正を期待していた市場予想に反して、速報値のマイナス1.6%(年率換算・11/17発表)からマイナス1.9%へ下方修正された。週明けの東京市場でもNYの株高を受けて上昇期待が強かったが、上値の重い展開となった。
■ 為替は米雇用統計発表を受けて121.50円/ドル台まで円安が進んだが、円安へのピッチが速かったことから調整局面を迎えている。
■先週1週間は、TOPIX、日経平均の上昇は比較的大きかったものの、2部並び新興市場では伸び悩んでおり、為替(円安)による明暗が顕著に表れている。
■14日に衆議院選挙の投開票を迎えるが、与党(自公)の絶対的優位性は揺らぎそうに無く、アベノミクス(金融緩和+円安)が継続されると思われる。株価上昇率から見ると内需・中小型銘柄に出遅れ感はあるものの強気にはなり難い。大型・輸出の押し目を探る展開が続きそうである。 

<コンセンサス予想EPSは4週連続して全期間プラス>
■IFIS/TIWコンセンサス225(日経225のコンセンサスEPS)は、今回も今期・来期・再来期ベースのいずれもがプラスとなった。コンセンサス予想EPSの前週比プラス企業数比率も高い水準でのプラスを継続しており、日経平均採用銘柄に関しては円安を享受できる企業が多く含まれていることが影響している。今回も日経平均の妥当レンジを上方修正する。
■前回のレポートで「年末までに18,000円の展開も十分有り得るだろう」と述べたが、ザラ場では昨日達成した。予想業績からは来年度中に日経平均20,000円も十分視野に入っているそれを踏まえた上で調整局面で押し目買いと非労働集約型企業へのポートフォリオの転換を図るべきと考える。

 

◇日経平均妥当水準(レンジ)

17,500円~20,350円 (前回 17,150円~19,950円)

*「IFIS/TIWコンセンサス225」(12月6日)来期予想ベースEPSをもとに算出

 

◇IFIS/TIWコンセンサス225(12月6日)

今期予想EPS 923.53 (前週 917.65円)
来期予想EPS 1030.58 (前週 1024.71円)
再来期予想EPS 1128.03 (前週 1123.67円)
今期予想PER 19.40 (前週 19.03倍)
来期予想PER 17.39 (前週 17.04倍)
再来期予想PER 15.89 (前週 15.54倍)
来期予想PBR 1.37 (前週 1.35倍)
来期予想ROE 7.90% 前週 7.90%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
6.84% (前週 6.87%)

*12月6日 日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出

 

 

図1 

妥当レンジは2009年以降、最高水準を更新中であり、割高感は少ない。 

 

図2

来期予想ベースのプラス企業比率は、59.5%→66.9%→60.9%→65.2%。
再来期予想ベースは57.1%→63.3%→63.2%→63.4%。
企業業績見通しは引き続き上方へのシフトが継続。 

 

 図3

前週に引き続き、投資家の期待リターン(要求利回り)はやや上昇。やや、警戒水準に近づいているようにも見えるが、7.0%を割り込んだ昨年年末との比較では7.26%であり、まだ特段の懸念は必要ないと考える。

 

図4 

コンセンサス予想EPSは過去2年と比較しても力強く推移。 

 

 

 

 

出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2012年1月から表示

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り
株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。