10月24日妥当レンジ 15,300円~17,800円
国内景気は減速感があるが、一方で追加緩和期待も

2014/10/28

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

<企業業績好調が下支えとなり冷静さを取り戻しつつある>
■先週は市場はやや落ち着きを取り戻し、質への逃避から2.0%を瞬間的に下回った米長期金利(10年国債利回り)も23日には2.3%付近にまで上昇している。NY株式市場(ダウ)も16,800ドルまで回復した。特に目だって何か状況が好転したわけではないが、欧州の景気停滞がウクライナ問題であったことが明確化されたことや、米国企業決算の好調が下支えしているものと考えられる。
■日本株市場も、海外市場の落ち着き、為替が107.70円/ドルとやや円安に戻したこと、企業2Q見通しの上方修正が続いていることなどから、戻りは鈍いものの日経平均株価は15,388円(27日現在)を回復している。
■今週は米FOMC(28~29日)、日銀政策決定会合(31日)、日米の各種経済統計発表があることから様子見の展開が予想される。FOMCでは量的金融緩和(QE3)の終了が予定通り確認される見通しである。日銀政策決定会合においても政策変更は見込めないが、消費者物価や雇用統計の数値次第では追加金融緩和期待が高まる可能性も考えられる。

<コンセンサス予想EPSは前週比微減>
■IFIS/TIWコンセンサス225(日経225のコンセンサスEPS)は、今期予想ベースではプラスであったものの、来期、再来期においては若干ではあるがマイナスであった。前週比プラス企業数もマイナス企業数を下回った。決算直前で母数(プラスあるいはマイナスに変化した企業)が少なかったこともあるが、2Q決算の業績上方修正が続いている状況にあって不整合な感じが否めない。決算発表の前半のピークとなる30日、31日に注目。
■依然として株価水準は妥当レンジの下限水準にあり割安感が強い。エボラ熱のパンデミックへの危機感や制止行為による経済活動の停滞が懸念されるものの、リスク回避的行動が高まることは現時点では考えにくい。国内景気への不安感が株価を抑制しているだけに、むしろポジティブサプライズに反応しやすいと考える。

 

◇日経平均妥当水準(レンジ)

15,300円~17,800円 (前回 14,650円~17,050円)

*「IFIS/TIWコンセンサス225」(10月24日)来期予想ベースEPSをもとに算出

 

◇IFIS/TIWコンセンサス225(10月24日)

今期予想EPS 910.23 (前週 910.51円)
来期予想EPS 1011.80 (前週 1012.20円)
再来期予想EPS 1106.90 (前週 1105.93円)
今期予想PER 16.80 (前週 15.96倍)
来期予想PER 15.11 (前週 14.36倍)
再来期予想PER 13.81 (前週 13.14倍)
来期予想PBR 1.18 (前週 1.12倍)
来期予想ROE 7.84% 前週 7.79%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
7.00% (前週 7.07%)

*10月24日 日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出

 

 

 図1

依然として株価は妥当レンジの下限水準。

 

 

図2

来期予想ベースのプラス企業比率は、60.8%→68.7%→54.6%→44.8%。再来期予想ベースは56.2%→68.5%→58.8→48.9%。決算発表直前でサンプル数が少ない影響もあり、急低下。

 

 

図3 

予想ROEは緩やかな上昇傾向にある中で、投資家の期待リターン(要求利回り)が上昇している。

 

 

図4

株価の下落局面でのNT倍率の上昇は、市場の流動性低下を示している。

 

 

出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2012年1月から表示

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り
株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。