10月3日妥当レンジ 15,300円~17,750円
小売業の2Q決算から上値はやや抑制的か

2014/10/07

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

<8月の鉱工業生産と、日銀短観が下落の伏線>
■先週は週央に米国株の調整を機にドル円が円高に振れ、日本株は大きく下落した。これは、9月30日に発表された8月の鉱工業生産が前月比1.5%低下したこと、8月の家計調査では2人以上の世帯の消費支出は実質で前年同月と比べて4.7%減少したことなど、10月1日に公表された日銀短観において非製造業および中小企業の景況感が悪化したこと、が伏線となった。
■8月の鉱工業生産における業種別生産活動では15業種中10業種がマイナスであった。出荷が落ち込む中で在庫が上昇しており、かなりお寒い状況である。そのため、同日に発表された失業率(7月の3.8%から8月は3.5%)、大型小売店販売(プラス転化)の改善を打ち消してしまった。
■3日発表された9月の米雇用統計において、失業率は6.1%から5.9%に低下し、非農業部門雇用者数も24.8万人と強い数値が出たことから再び109円台の円安となり、月曜日の日本株は反発した。
■ただし、米長期金利(10年国債利回り)は再び2.5%を下回る水準にあり、円安が持続されるかどうかは微妙である。他方で、円安そのものが日本経済に与える悪影響も国会でも議論されつつあり、方向感(為替水準に対するマーケットの位置付け)が見え難い状態が続くと考える。

 

<来期予想コンセンサスEPSは1,000円の大台に>
■IFIS/TIWコンセンサス225(日経225のコンセンサスEPS)は、今期予想ベースはマイナスであったが、来期、再来期はプラスであった。来期ベースははじめて1,000円の大台に乗った。前週比プラス企業比率も50%超を安定して確保しており、今回も妥当レンジを引下げるが、割安感は強いという認識は変わらない。
■2月決算の小売業の2Q決算発表が続いている。好決算はかなり限定されると予想できるだけに、上値は抑えられる展開も考えられる。10月下旬から始まる3月決算企業の2Q決算を視野に、輸出関連企業の押し目を拾う局面であろう。

 

◇日経平均妥当水準(レンジ)

15,300円~17,750円 (前回 15,700円~18,250円)

*「IFIS/TIWコンセンサス225」(10月3日)来期予想ベースEPSをもとに算出

 

◇IFIS/TIWコンセンサス225(10月3日)

今期予想EPS 887.31 (前週 891.03円)
来期予想EPS 1000.82 (前週 998.70円)
再来期予想EPS 1093.02 (前週 1092.02円)
今期予想PER 17.70 (前週 18.21倍)
来期予想PER 15.70 (前週 16.25倍)
再来期予想PER 14.37 (前週 14.86倍)
来期予想PBR 1.22 (前週 1.26倍)
来期予想ROE 7.74% 前週 7.76%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
6.81% (前週 6.77%)

*10月3日 日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出

 

 

 図1
日経平均妥当レンジは下方にシフト。株価はほぼレンジ下限に位置しており、割安感が強まっている。

 

図2 

来期予想ベースのプラス企業比率は、51.4%→56.1%→59.1%→60.8%。再来期予想ベースは48.2%→52.9%→61.5%→56.2%。高水準をキープしている。

 

図3 

 コンセンサスEPSの上向きトレンド継続。来期予想EPSは、1,000円台に乗った。日東電工(6988)、トヨタ自動車(7203)、TDK(6762)、富士重工業(7270)などが寄与。

 

図4 
インプライド・リスク・プレミアム(来期ベース)は再び上昇(=株価割安)。再び株価は上昇トレンドか? 

 

 

出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2012年1月から表示

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り
株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。