9月5日妥当レンジ 15,250円~17,700円
8月の消費は各社の月次データを見る限り上向き傾向

2014/09/10

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

<米雇用統計はコンセンサスを下回るものの市場は好評価>
■先週は、ウクライナでの停戦合意、ドル円での円安が進んだこと、内閣改造により政権基盤がより強固になったという評価、などから日本株市場では上昇トレンドが続いた。
■105円台後半/ドルの円安を齎したのは、4日のECBの利下げである。政策金利を0.15%→0.05%に引き下げるとともにABS(資産担保証券)の購入も決定した。5日発表された8月の米雇用統計では、非農業部門雇用者数は前月比14.2万人増と20万人を大きく下回ったが、失業率が7月の6.2%から8月は6.1%と改善したことが好感された。
■米利上げ時期の想定前倒しから米長期金利(10年国債利回り)が、2.4694%と上昇した。これを受ける形で、9日に106円台に円安が進んでいる。日本株市場では、自動車を中心とした輸出企業の株式が上昇する一方で内需企業の株価が下落しており、日経平均株価は小幅な上昇に留まっている。
■7日の日経新聞朝刊では1面で「景気回復もたつく」というやや弱気のトーンの見通しが発せられた。8日に発表された4-6月のGDP改定値(前期比年率換算)は7.1%減と速報値の6.8%減から下方修正された。7月の個人消費も統計的には芳しくない状態である。しかしながら、9月に入ってから公表される小売・外食各社の8月の月次売上高(前年同月比)を見る限り、客数の減少は続いているものの販売単価の上昇から売上高では前年同月を上回る例も多く、むしろ内需は上向いているように見える。決して弱気になる必要はないと考える。

 

 

<コンセンサスEPSは来期・再来期プラス>
■IFIS/TIWコンセンサス225(日経225のコンセンサスEPS)は、今期予想ベースはマイナスとなったが、来期・再来期ベースはプラスであった。前週比プラス企業比率も来期・再来期では50%超を維持した。日経平均の妥当レンジは据え置くが、依然としてレンジ下限近辺に株価は位置しており、割安感が強い。8月の国内統計発表によって弱きムードが後退するものと思われるので、内需株の押し目に妙味があると考える。

 

 

◇日経平均妥当水準(レンジ)

15,250円~17,700円 (前回 15,250円~17,700円)

*「IFIS/TIWコンセンサス225」(9月5日)来期予想ベースEPSをもとに算出

 

◇IFIS/TIWコンセンサス225(9月5日)

今期予想EPS 888.72 (前週 890.59円)
来期予想EPS 995.03 (前週 993.50円)
再来期予想EPS 1088.26 (前週 1086.09円)
今期予想PER 17.63 (前週 17.32倍)
来期予想PER 15.75 (前週 15.53倍)
再来期予想PER 14.40 (前週 14.20倍)
来期予想PBR 1.22 (前週 1.21倍)
来期予想ROE 7.77% 前週 7.81%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
6.81% (前週 6.91%)

*9月5日 日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出

 

 

図1 
日経平均株価は3週連続同水準。 

 

 図2

来期予想ベースのプラス企業比率は、54.8%→56.6%→51.8%と上昇。再来期予想ベースも52.8%→58.0%→53.8%と安定して推移。

 

図3 

 NT倍率は底打ちか。目先は円安で輸出株に優位性があるだけにNT倍率上昇の可能性が強い 

 

図4 

 株価上昇によってインプライド・リスク・プレミアムは低下したものの、まだまだ遥かに安全域

 

 

出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2012年1月から表示

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り
株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。