8月22日妥当レンジ 15,250円~17,700円
妥当レンジは上方シフト、政府の景気対策を注視

2014/08/26

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

<米利上げ時期については不明瞭ながらも懸念が後退>
■22日のジャクソンホールでのイエレン議長の講演に関しては、利上げ時期に対して何ら言質を与えるものは無かったものの、講演前に一時的に上昇した米長期金利が、講演後には低下していることから、早期利上げの可能性はやや後退したものと考えられる。
■ドル円は104円台に突入している。これは将来的な日米金利差を見込んでいるという側面もあるが、債券市場の動き(米国債利回りの低下)とはやや相反する。ロシアへの制裁によって影響を受けるユーロからの資金シフトや日本経済の停滞を反映している可能性も強い。
■昨年末の為替水準が105.30円/ドルであった点を考慮すれば(昨年末の日経平均は16,291円)、単純な為替水準と株価の比較からは株価は妥当な水準との見方もある。しかし、円安が輸出数量の拡大には結びつかないことがほぼ明確になった状況では、単純に円安=株高の図式を唱えるには無理があると考える。
■しかし、一方で利益水準から考慮すれば昨年末時点からは予想EPSは増加しており(向こう52週予想では約9%増加している)、株価の割安感はむしろ高まっている。ただし、消費税率の10%引き上げについては慎重論も根強いことから、足下の景気回復状況と今後の景気対策などに市場は敏感な状態が続くと思われる。目先的には7-9月の国内GDP値はテクニカル面からも回復が見込まれており、(新たな地政学的リスクの拡大が生じない限り)米経済指標発表などをトリガーにした株価の上昇基調が続くものと考える。

 

<コンセンサスEPSは全期間プラス>
■IFIS/TIWコンセンサス225(日経225のコンセンサスEPS)は、全期間(今期・来期・再来期ベース)においてプラスであった。前週比プラス企業比率もいずれの期間でも50%を超えた。1Q決算発表を経過して、全体的には大きなプラス変化は見られなかったものの、比較的堅調に推移したと言えるのであろう。カタリストの無い中での上昇局面はまだ続きそうである。

 

◇日経平均妥当水準(レンジ)

15,250円~17,700円 (前回 15,050円~17,500円)

*「IFIS/TIWコンセンサス225」(8月22日)来期予想ベースEPSをもとに算出

 

◇IFIS/TIWコンセンサス225(8月22日)

今期予想EPS 884.74 (前週 883.89円)
来期予想EPS 990.33 (前週 990.12円)
再来期予想EPS 1082.46 (前週 1080.39円)
今期予想PER 17.56 (前週 17.33倍)
来期予想PER 15.69 (前週 15.47倍)
再来期予想PER 14.36 (前週 14.18倍)
来期予想PBR 1.22 (前週 1.20倍)
来期予想ROE 7.80% 前週 7.78%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
6.86% (前週 6.89%)

*8月22日 日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出

 

 

図1 
妥当レンジは株価調整前を超えて一段と水準アップ。 

 

 図2

来期予想ベースのプラス企業比率は、43.9%→52.6%→54.8%に回復。、再来期予想ベースも43.5%→52.8%と回復。

 

 図3

コンセンサス予想EPSは、今期ベースが横ばいながらも、来期・再来期はわずかに上向き傾向。 

 

図4 

インプライド・リスクプレミアム(IRP)はやや低下。地政学的なリスクが後退したものと推察される。(IRPが低い状態は割高であるが、一定水準以上=7%?に上昇するのはクライシス状態を表わす)

 

 

出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2012年1月から表示

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り
株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。