6月13日妥当レンジ 14,650円~17,000円
イラク情勢と原油価格の上昇に注意
【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】
<中東情勢混沌化の危機を孕む>
■アルカイダ系武装集団イラク・レバントのイスラム国家(ISIL)がイラク北部の都市を制圧した。ISILはスンニ派の過激組織であるが、同じくスンニ派のクルド人民兵組織と連帯し、シリア反政府勢力の支援を受け、シーア派の現イラク政権に対して宗教戦争を起こしているものである。
■スンニ派のISIL勢力が強まることで、シリアのアサド政権の基盤も危うくなる他、シーア派の隣国イランの介入も指摘されている(米国が指示する可能性も)。イランの介入が生じた場合にスンニ派であるサウジアラビアやアラブ首長国連邦などにも動きが出てくる可能性も考えられる。短期的にはイラク国内の問題であるが、中東地域全般の根底を揺るがす危険性を孕んでいる。
■今週は米FOMCが17~18日に予定されている他は大きなイベントは見当たらない。FOMCも予想通り緩和縮小が行われるだけに留まると思われる。そのため、イラク情勢を睨みながら原油価格を注視する展開が見込まれる。18日に日本の貿易統計(5月速報)の発表が行われるが、輸出の減少などによって再び1兆円台の赤字が見込まれている。
<内需系と資源関係に妙味>
■IFIS/TIWコンセンサス225(日経225のコンセンサスEPS)は前週比で小動きに留まった。前週比プラス企業の比率はほぼ50%で目立つような変化は無い。ただし、ベースデータ(日経新聞)の振れから妥当レンジを若干上に引き上げる。
■インデックスが伸び悩む中で、NT倍率の低下、日経平均/日経JASDAQ平均比率の低下があり、前回の予想に反して中小型が強かったことが伺える。イラク情勢の緊迫化などでやや円高で推移していたことから内需系を中心に物色された結果と考えられる。
■引き続き妥当レンジからみて現株価水準には割安感が強い。しかし、短期的にはイラク情勢によってはリスク回避的な動きが出てくる可能性もある。原油価格の上昇に関連した資源株や内需系銘柄に引き続き妙味が大きいだろう。
◇日経平均妥当水準(レンジ)
14,650円~17,000円 | (前回 14,550円~16,900円) |
*「IFIS/TIWコンセンサス225」(6月13日)来期予想ベースEPSをもとに算出
◇IFIS/TIWコンセンサス225(6月13日)
今期予想EPS | 883.45円 | (前週 886.23円) |
来期予想EPS | 981.41円 | (前週 981.39円) |
再来期予想EPS | 1075.18円 | (前週 1073.83円) |
今期予想PER | 17.09倍 | (前週 17.01倍) |
来期予想PER | 15.38倍 | (前週 15.36倍) |
再来期予想PER | 14.04倍 | (前週 14.04倍) |
来期予想PBR | 1.20倍 | (前週 1.19倍) |
来期予想ROE | 7.77% | (前週 7.72%) |
来期予想 インプライド・リスク・プレミアム |
6.79% | (前週 6.76%) |
*6月13日 日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出
プラスの変化は弱まわったが、50%以上をほぼ維持している。企業業績の緩やかな上昇が続く限り、株価下落の不安は少ない。
新興市場は、リスクプレミアムの差と、日経平均/日経JASDAQ平均の倍率から見て特に妙味は無いのであるが。
市場リスクはおおよそ平常時の平均的な水準(どちらかと言うとやや高め=株安)。イラク情勢が短期的に悪化しても世界経済への影響は大きくないが、原油価格の上昇には要注意。
出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2012年1月から表示
「IFIS/TIWコンセンサス225」について IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。 理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。 4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。 〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕 会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。 〔予想EPS増減社数〕 今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。 〔予想PBR(今期末)〕 前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。 〔予想ROE(来期ベース)〕 前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。 〔リスクプレミアム〕 特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り |