3月20日妥当レンジ 13,650円~15,850円
12ヵ月移動平均で考えれば割安

2014/03/25

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

<イエレン発言で一時混乱>
■先週は、米FOMC(18~19日)後の記者会見においてイエレン議長が量的緩和終了後6ヵ月程度(2015年春頃)で利上げの可能性を示唆した発言から米国株式市場が大幅下落。20日(木)の日本株市場も下落した。
■19日に発表された2月の貿易収支(日本)は8,003億円の赤字であったが、1月の2兆7,900億円からは大きく減少した。前年2月が7,775億円であったので必ずしも改善とは言えないまでも輸出は前年同月比9.8%増と伸び、やや明るい兆しもあった。
■24日に発表された中国の3月製造業業況感指数(PMI)の速報値は48.1と5ヵ月連続で低下。生産活動が依然として停滞が続いていることを示唆するものであった。
■24日の日本株市場は、やや円安方向に為替が振れたことや先週末(21日)のNY市場が反発したことから、イエレン発言の前の株価水準を回復した。ウクライナ情勢、中国景気、消費税率引き上げの影響への懸念などから引き続き、上値の重い展開が予想されるが、バリュエーション面では割高感は無く、引き続き押し目買いのスタンスで臨む状況と考える。なお、26日は3月決算企業の権利付き最終日となる。

 

<コンセンサス予想は膠着状態>
■3月20日時点の「IFIS/TIWコンセンサス225」は、引き続き前週比で大きな変化はない。来期予想ベースでは若干マイナス、今期・再来期ベースは若干プラス。閑散とした中でも前週比プラス企業よりもマイナス企業が目立った。妥当レンジは微調整する。
■やや気になるのは予想ROE水準(来期予想ベース)が低下傾向にあることである。日経平均株価は前週比下落しているにも関わらず、期待リターン(来期予想ベース)は低下しており、割安感が増してこない。
■ ただし、期末を迎えて対象決算期の移行が見込まれるため、12ヵ月移動平均で考えれば割安な水準。新たに移動平均で見た妥当レンジ(下限)と日経平均のグラフを作成したので参照いただきたい(3頁下図)。

 

◇日経平均妥当水準(レンジ)

13,650円~15,850円 (前回 13,800円~16,000円)

*「IFIS/TIWコンセンサス225」(3月20日)来期予想ベースEPSをもとに算出

◇IFIS/TIWコンセンサス225(3月20日)

今期予想EPS 763.47 (前週 763.21円)
来期予想EPS 891.05 (前週 893.23円)
再来期予想EPS 992.97 (前週 992.07円)
今期予想PER 18.63 (前週 18.77倍)
来期予想PER 15.96 (前週 16.04倍)
再来期予想PER 14.32 (前週 14.44倍)
来期予想PBR 1.24 (前週 1.26倍)
来期予想ROE 7.76% 前週 7.84%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
6.72% (前週 6.74%)

*3月20日 日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出

 

 

図1 
予想ROEの低下等で妥当レンジも下方シフト。割安感はあまり強くない 

 

図2

 

 予想ROEの低下から期待リターンは株価が下落したにもかかわらず、7.36%→7.31%と低下(=割高方向)。

 

図3

  NT倍率は再び上昇。 

 

 図4

 来期予想ベースと再来期予想ベースの妥当レンジ(いずれも下限)を按分して算出。現株価水準は割安感が強いが・・・・。 

 

出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2012年1月から表示

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り
株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。