1月10日妥当レンジ 14,650円~17,000円
米雇用統計を受けて円高にまき戻しが生じたが

2014/01/15

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

<過去最大の経常収支赤字額>
■10日の米雇用統計(12月)において、非農業部門雇用者数の増加が7.4万人増と市場予想(約20万人増)を大きく下回ったことから、 NY株式の下落・ドル円での円高の巻き戻しが生じた結果、連休明けの東京市場では大幅な株価の下落に見舞われた。
■14日に発表された日本の経常収支(11月)は、5,928億円の赤字となり、統計の比較できる1985年以来で最大の赤字額となった。
■昨年末から14日までに日経平均株価は5.3%下落、TOPIXは2.6%下落した。日経平均についてはやや加熱した水準であったことからスピード調整が必要であったと考えられる。しかし、円安が日本経済全体にはメリットが少ないことへの認識が台頭しつつあること、4月からの消費税率引上げを視野にあること、も懸念されている可能性も残る。また、細川護煕元首相の都知事選立候補に対して、現政権基盤への影響を外国人投資家が懸念しているとの見方もある。いずれにしても昨年末から急上昇をした中小型株も含めて一時的に調整局面を迎えたものと考える。
■米景気回復はあくまでもそのスピードの問題である一方で、日本の経常収支赤字は構造的な問題である。2013年度にも年間で赤字転落の可能性が強まる中、円安トレンドは基調として変らないと考えられる。その点から輸出大型株の押し目買いのタイミングになる可能性が指摘できよう。

<コンセンサスEPSは自動車を中心にプラス企業拡大し>
■1月10日時点の「IFIS/TIWコンセンサス225」は、前週比では、今期は若干マイナス、来期・再来期は若干プラスであった。自動車ならびに半導体関連など輸出銘柄はプラスの傾向が強まっており、日米の決算発表を踏まえて、自動車など輸出企業を中心に出直る展開を期待している。

  

◇日経平均妥当水準(レンジ)

14,650円~17,000円 (前回 14,650円~16,950円)

  *「IFIS/TIWコンセンサス225」(1月10日)来期予想ベースEPSをもとに算出

 

◇IFIS/TIWコンセンサス225(1月10日)

今期予想EPS 770.84 (前週 771.58円)
来期予想EPS 878.21 (前週 876.72円)
再来期予想EPS 982.75 (前週 981.38円)
今期予想PER 20.64 (前週 21.11倍)
来期予想PER 18.12 (前週 18.58倍)
再来期予想PER 16.19 (前週 16.60倍)
来期予想PBR 1.42 (前週 1.43倍)
来期予想ROE 7.82% 前週 7.68%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
 
6.43% (前週 6.26%)

*1月10日 日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出

 

 

日経平均は下落したが妥当レンジは水準を維持しており、調整後は出直る可能性は高いと考えられる。

   

 

期待リターンは7.13%に上昇。    

           

 

前週比プラス企業はほぼ60%にあり、2Q決算時よりも3Q決算は期待が持てる

        

  

NT倍率は急速に低下。日経平均の突出が調整されつつある。  

    

 

  

 

  出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2012年1月から表示

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り

株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。