8月2日妥当レンジ 13,750円~15,900円
割安銘柄の水準訂正の動きに注意

2013/08/07

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

<為替動向に振られる株式マーケット>
■7月中・下旬の株価下落時には、一部の有力企業の業績不振から欧州や新興国経済の影響が懸念され、1Q決算発表全体に不安感が広がった。1Q決算も前半が終わりつつある中、過剰な期待が剥げ落ちると同時に、悲観的な見方もまた後退しつつあるように見受けられる。
■2日に公表された米雇用統計においては、失業率は改善したものの、非農業部門雇用者の増加数は市場予想を下回り、円高方向に為替が振れている。株式市場もまた、1Q決算で(全体としては)サプライズがないことを受けて、為替ならびに為替の変動要因となる海外経済の動きに左右される展開に戻りつつある。概ね現水準を挟んだボックス相場が続くと考える。
■主力の輸出銘柄は為替の影響を受け易く、また数量ベースでの拡大が注目されており、上値の重い展開が続いている。こうした中でも割安銘柄の水準訂正が局地的には生じており、足の速い材料を追いかけるよりも割安銘柄を分散保有する戦略に優位性があると考える。

<コンセンサス予想EPSは弱含み続く>
■8月2日時点の「IFIS/TIWコンセンサス225」は、いずれの対象期間(今期、来期、再来期)も予想EPSは前週比マイナスとなった。減少となったのは特定小数の銘柄の影響が強く、前週比プラスとなった企業数は、マイナスとなった企業数よりもいずれの対象期間でも多かった。
■1Q決算発表はこれから後半を迎えるが、1Q時点では業績好調でも企業が通期見通しを変更する可能性は低く、アナリストのコンセンサス予想も大きく上方に振れる可能性は低い。個々の銘柄でサプライズはあっても、マーケットの方向性を変えることはないと考える。今回は、予想ROEや来期増益率の変化を受けて予想レンジをやや上方に修正する。

◇日経平均妥当水準(レンジ)

13,750円~15,900円 (前回 13,500円~15,650円)

  *「IFIS/TIWコンセンサス225」(8月2日)来期予想ベースEPSをもとに算出

 

◇IFIS/TIWコンセンサス225(8月2日)

今期予想EPS 790.49 (前週795.99円)
来期予想EPS 885.25 (前週887.31円)
再来期予想EPS 975.21 (前週979.29円)
今期予想PER 18.30 (前週 17.75倍)
来期予想PER 16.34 (前週 15.92倍)
再来期予想PER 14.83 (前週 14.43倍)
来期予想PBR 1.31 (前週1.27倍)
来期予想ROE 8.00% 前週7.97%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
 
6.62% (前週6.68%)

*8月2日 日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出

 

 

1Q決算発表終了後は、(為替変動が限定されるという前提では)妥当レンジは暫く現水準で推移か?                  

 


予想ROEの変動が小さくなっている(業績見通しが当面現状維持か)。投資家のセンチメントによる上下動する相場が継続しそうであるが、振れ幅はあまり大きくないだろう。  

  

 

 

 株価と為替の連動性は高い状態が続く。 

               

  

日経市況欄から算出した日経平均のEPSとコンセンサス予想EPSの乖離は依然として大きい。

           

         出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成 
     いずれも2012年1月から表示

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り

    
 7
株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
TIWマガジン「投資の眼」   株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。

このページのトップへ