7月26日妥当レンジ 13,500円~15,650円
1Q決算発表で見通しの大きなプラス変化は期待し難い(2)
【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】
<貿易収支とCPIがポイントになる?>
■先週末(26日)、月曜(29日)と日本の株式市場は大幅な下落を見た。米国の経済指標で弱いものが多かったことや、中国経済の減速リスク、キヤノン(7751)、信越化学工業(4063)、JFEHD(5411)など市場の期待を下回る決算が続いており、1Q決算に対する警戒感が広がっていること、が理由とされている。
■24日に発表された6月の貿易収支では赤字幅が縮小し、収支がやや改善した。しかしながら、円安による輸出金額の増加が影響したものであり、輸出は数量ベースでは伸びていない。26日発表の全国消費者物価指数(CPI)もコア(生鮮食品を除く)では1年2ヵ月ぶりに前年比0.4%ブラスとなったが、コアコア(総合から生鮮食品、石油製品および特殊要因を除く)では前年比0.4%の下落となっている。
■中国の経済環境の悪化から輸出数量が伸びない状況下では、円安効果は一部の企業に限定される。一方でエネルギーコストをはじめ原材料費の上昇が圧迫要因になる。コアCPIのプラスから金利上昇に向えば景気を圧迫すると同時に円高要因になる可能性も考えられる。足元の円高が米国の経済指標が弱かったことだけであれば、これだけの株価下落が生じたことは説明力としては弱いように感じられる。今後はアベノミクスへの評価として、貿易収支とCPIへの注目が高まると考える。
<コンセンサス予想EPSは弱含み>
■7月26日時点の「IFIS/TIWコンセンサス225」は、今期マイナス、来期と再来期はプラスとなった。これは、ファナック(6954)のプラスの影響が大きい。前週比プラスとなった企業数は、マイナス企業数を下回っている。今週から決算発表の山場を迎えるが、大きなプラス変化は期待し難いだろう。日経平均の妥当レンジは、予想ROEの低下などから今回はやや下方に修正する。
■今週は週末(8/2)の米雇用統計を筆頭に経済指標の発表が続く。FOMC(7/30~31)、ECB理事会(8/1)など金融政策決定会合もスケジュールされており神経質な展開が続くと思われる。
◇日経平均妥当水準(レンジ)
13,500円~15,650円 | (前回 13,850円~16,000円) |
*「IFIS/TIWコンセンサス225」(7月26日)来期予想ベースEPSをもとに算出
◇IFIS/TIWコンセンサス225(7月26日)
今期予想EPS | 795.99円 | (前週786.67円) |
来期予想EPS | 887.31円 | (前週884.20円) |
再来期予想EPS | 979.29円 | (前週975.24円) |
今期予想PER | 17.75倍 | (前週 18.27倍) |
来期予想PER | 15.92倍 | (前週 16.50倍) |
再来期予想PER | 14.43倍 | (前週 14.96倍) |
来期予想PBR | 1.27倍 | (前週1.33倍) |
来期予想ROE | 7.97% | (前週8.03%) |
来期予想 インプライド・リスク・プレミアム |
6.68% | (前週6.64%) |
*7月26日 日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出
期待リターン(下表参照)が上昇傾向にあるので、妥当レンジか下限に再び近づく展開も考えられる。
予想ROEは緩やかに低下している。1Q決算で予想EPSの上方シフト(=予想ROEの改善)が生じない限りは、上値の臣展開が続くことも考えられる。
長期金利は現状では抑えられてはいるが・・・・。
中小型に顕著な割安感は現状では見出し難い。為替水準も円高に振れており、銘柄選択の方向性を見出し難い展開が続きそうだ。
出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2012年1月から表示
「IFIS/TIWコンセンサス225」について IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。 理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。 4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。 〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕 会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。 〔予想EPS増減社数〕 今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。 〔予想PBR(今期末)〕 前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。 〔予想ROE(来期ベース)〕 前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。 〔リスクプレミアム〕 特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り |