6月7日妥当レンジ 13,000円~15,000円
調整一巡後もセンチメントに振れ易い展開続く
【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】
<米雇用は緩やかな改善傾向、日本株式の調整も底入れか>
■注目の米雇用統計(7日発表)は、5月の非農業部門雇用者数は17.5万人増と事前予想を上回ったものの、失業率は4月の7.5%から5月は7.6%と悪化した。発表直後は円高に振れたものの、その後は円安方向に動いた。米FRBが早期に資産買い入れプログラムを縮小するとの懸念が後退し、NY株式は上昇した。
■この流れを受けた月曜日の東京株式市場は、売られ過ぎとの見方から日経平均株価は636円上昇する全面高となった。5月からの調整も漸く底入れしたと考える。
<中小型株は相対的にまだ割高>
■6月7日時点の「IFIS/TIWコンセンサス225」は、来期ベースでは小幅にプラスであったものの、今期、再来期ベースにおいては僅かながらマイナスであった。自動車関連銘柄でプラスが目立ったものの、薬品、金融、商社などが弱含みであった。アナリストの業績見直しもほぼ一巡したと思われ、1Q決算が始まる7月中旬頃までは大きな変化は生じ無いと考えられる。今回の日経平均の妥当レンジは表記の通り小幅に調整する。
■6月10日の株価水準(日経平均13,514.20円)は妥当レンジの下位水準にあり、上昇余地は十分ある。ただし、1Q決算発表時点では業績見通しの変化は限定的であり、為替相場、海外市場などセンチメントに対して振れ易い展開が続くと考えられる。国内景気回復が顕在化するには時間を要すると考えられ、内需の多い中小型株より、輸出大型株に優位性がある展開が続きそうである。
■東証1部とJASDAQ市場のリスクプレミアムの差は0.47%に留まっており、相対的に割高感がある。中小型株はリバウンドで上昇する過程で選別が強く働くものと考えられる。調整一巡後の仕切り直しでは、業績動向をしっかり押さえる必要がある。
◇日経平均妥当水準(レンジ)
13,000円~15,000円 | (前回 13,100円~15,100円) |
*「IFIS/TIWコンセンサス225」(6月7日)来期予想ベースEPSをもとに算出
◇IFIS/TIWコンセンサス225(6月7日)
今期予想EPS | 796.65円 | (前週797.59円) |
来期予想EPS | 884.27円 | (前週883.38円) |
再来期予想EPS | 977.29円 | (前週977.98円) |
今期予想PER | 16.16倍 | (前週 17.27倍) |
来期予想PER | 14.56倍 | (前週 15.59倍) |
再来期予想PER | 13.18倍 | (前週 14.08倍) |
来期予想PBR | 1.16倍 | (前週1.24倍) |
来期予想ROE | 7.94% | (前週7.96%) |
来期予想 インプライド・リスク・プレミアム |
6.76% | (前週6.63%) |
*6月7日 日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出
先週金曜時点では妥当レンジ下限を日経平均は下回る状態。売られ過ぎの解消はまだ期待できる
株価下落により期待リターンが上昇。一方で、予想ROE(来期ベース)は頭打ち。 予想ROEの上昇(=株価上昇)には、業績拡大は勿論であるが、積極的な増配が求められる。
今期予想EPSは日経予想をアナリスト予想が大きく下回る状態。株価の反騰にはこの差が縮まることが望ましい。
JASDAQ市場のリスクプレミアム(上乗せ期待利回り)はまだ0.47%と低く、中小型株市場に相対的な割安感は生じていない。
出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2012年1月から表示
「IFIS/TIWコンセンサス225」について IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。 理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。 4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。 〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕 会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。 〔予想EPS増減社数〕 今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。 〔予想PBR(今期末)〕 前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。 〔予想ROE(来期ベース)〕 前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。 〔リスクプレミアム〕 特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り |