5月17日妥当レンジ 14,050円~16,250円
アナリスト予想は見直しが遅れているだけなのか?

2013/05/21

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

<日経新聞からの逆算値では今期予想EPS893.10円>
■決算発表が先週で終了した。決算発表を睨みながら日々、日経新聞(市況欄)の予想PERから今期予想EPSを算出していたが、17日時点では893.10円になった。為替レート(ドル円)が103円台に突入したことも大きいが、先週の株高を演出したのは、企業業績予想が決算前のアナリスト予想を大きく凌駕してゆくことにあったのではないかと思われる。3月29日時点のアナリストコンセンスEPS(この時点は来期)は757.39円であり、日経予想(ほぼ会社予想)はその値を130円以上上回った。
■会社計画は為替前提(ドル円)を90~95円に置いており、100円を超える円安水準が続くのであれば、さらなる業績向上も期待できる。
■しかし、17日時点でのアナリストコンセンス予想(今期)は、779.13円に留まっており、日経予想との乖離は113.97円にも達する。アナリスト予想は本決算直後は日経予想に遅行する傾向が強いので乖離幅の殆どはその影響と考えている。

<妥当レンジはまだ上方シフトが見込める>
■5月17日時点の「IFIS/TIWコンセンサス225」は、対象決算期変更により前回同様にいずれの期間も大幅に予想EPSが増加した。今期ベースでは日経予想を大きく下回っているが、アナリストの見直し作業が遅れており、全体的にまだ大きく増加する余地が大きいと言える。今回の予想数値に基づく妥当レンジは14,050円~16,250円と小幅の修正に留まる。
■予想EPSが前回予想よりマイナスとなった業種は、薬品、海運、が目立っている。他の主力銘柄では日産自動車(7201)、コナミ(9766)、TDK(6762)などが挙げられる。全体的にはプラス企業がマイナス企業を大きく上回るトレンドが続いており、不安視する要素は少ない。仮に現状のアナリスト予想が大きく変化しなかったとしても現マーケット水準に割高感はない。強気のスタンスを継続する。

◇日経平均妥当水準(レンジ)

14,050円~16,250円 (前回 14,000円~16,200円)

  *「IFIS/TIWコンセンサス225」(5月17日)来期予想ベースEPSをもとに算出

 

◇IFIS/TIWコンセンサス225(5月17日)

今期予想EPS 779.13 (前週736.93円)
来期予想EPS 871.32 (前週853.29円)
再来期予想EPS 958.88 (前週931.37円)
今期予想PER 19.43 (前週 19.82倍)
来期予想PER 17.37 (前週 17.12倍)
再来期予想PER 15.79 (前週 15.68倍)
来期予想PBR 1.38 (前週1.38倍)
来期予想ROE 7.91% 前週8.05%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
 
6.47% (前週6.69%)

*5月17日 日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出

 

 

妥当レンジはまだ上方シストの可能性が強い。

            

  
 予想ROE(来期ベース)は前回の8.05%から7.91%に低下。実績BPS(1株純資産)が10,074円から10,440円に拡大したことがROE向上を阻害している。

   

  

 

今期予想EPSは日経予想をアナリスト予想が大きく下回る状態。一時的な要素が強いが最終的にアナリスト予想が日経予想を上回るかが今後の注目点。

        

  

JASDAQ市場のリスクプレミアムが、日経平均を下回っており、明らかに中小型株市場に割安感はなくなっている。銘柄選別が暫くは続くと考えられる。 

        

         出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成 
     いずれも2012年1月から表示

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り

    
 
株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。