4月5日妥当レンジ 12,400円~14,400円
長期金利低下を受けて、妥当レンジが大幅上昇

2013/04/09

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

<日銀金融緩和策に市場は大きく反応>
■既にご承知の通り、日銀政策決定会合を受けて、長期国債利回りの低下、円安、株価上昇が引き起こされている。8日のNY市場では一時的に99円/ドルを記録している。黒田総裁の意図が資産価格の引き上げにあると見たマーケットでは金融・不動産株がさらに高騰し、同セクターではバリュエーションで説明し難い水準にある銘柄も見受けられる。
■週末(5日)の米雇用統計は、非農業部門雇用者数の増加が市場予想の+19.0万人に対して、+8.8万人と大きく下回った。昨年11月以降の大幅増の反動と見られるものの、歳出削減や減税打ち切りの影響が顕在化する可能性もあり、注視が必要な状況となっている。対円ではドル高となっているもの、これを受けて対ユーロでは1.30ドル台とドル安が急速に進んでいる。

<長期金利の動向がポイント>
■4月5日時点の「IFIS/TIWコンセンサス225」は、引き続き全期間においてプラスであった。2月決算企業の決算発表が始まっており、対象決算期変更による上乗せが見込まれることからプラス基調が続くものと思われる。
■今回、妥当レンジを大きく引き上げた。金融緩和策の発表によって長期金利(10年国債利回り)の低下が顕著であった。週末の終値ベースでは、1週間前と比較して0.1%低下している。そのため、株価が上昇しているにもかかわらず、インプライド・リスク・プレミアム(市場が織り込んでいる資本コスト)は低下せずに反対に上昇した。これが妥当レンジを押し上げた要因である。
■再来期予想ベース(決算後は来期ベース)で算出した妥当レンジも13,400円~15,650円へと大きく上昇修正された。この点からは、一部セクターを除けば株式市場は割高ではない。しかし、注意すべき点は長期金利である。経済統計の発表や地政学的リスク、欧州での信用不安の勃発、などで長期債利回りが上昇が生じれば、株価は一時的にせよ下落する可能性があるだろう。
 

◇日経平均妥当水準(レンジ)

12,400円~14,400円 (前回 11,800円~13,700円)

  *「IFIS/TIWコンセンサス225」(4月5日)来期予想ベースEPSをもとに算出

 

◇IFIS/TIWコンセンサス225(4月5日)

今期予想EPS 563.21 (前週562.34円)
来期予想EPS 761.46 (前週757.39円)
再来期予想EPS 853.69 (前週849.77円)
今期予想PER 22.79 (前週 22.05倍)
来期予想PER 16.85 (前週 16.37倍)
再来期予想PER 15.03 (前週 14.59倍)
来期予想PBR 1.31 (前週1.26倍)
来期予想ROE 7.76% 前週7.70%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
 
6.75% (前週6.66%)

*4月5日 日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出

 

 

妥当レンジは大きく上方にシフトした。

      

  
 10年国債利回りは、1月頭の0.835%から大きく低下。  

 

  

 

1部市場急騰によって、JASDAQ(小型株)には再び相対的な割安感が台頭。

  

  

  アナリスト予想も再びアクティブに。予想業績の上方シフトに期待。

   

         出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成 
     いずれも2012年1月から表示

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り

    
 
株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
TIWマガジン「投資の眼」   株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。

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