9月30日妥当レンジ 26,369円~28,458円
株価浮揚は持続性はない、戻りは限定的

2022/10/04

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

投資のポイント

<4日の株価反発は一時的な戻りと見るべきだろう>
■先週は、英政府の大規模減税策発表を受け、インフレ懸念が広がり、英ポンド急落から金融市場に危機感が広がった(26日)。英イングランド銀行が超長期国債を無制限に買い入れると発表(28日)したことから危機的状況は回避されたが、インフレ懸念と金利上昇見通しの市場センチメントは変わらず週末(30日)も大幅な株価下落が続いた。
■経済指標も9月のユーロ圏消費者物価指数は前年同月比+10.0%に上昇(30日:8月+9.1%、市場予想+9.7%)、8月の米個人消費支出物価指数コアは+4.9%と上昇(30日:7月+4.7%、市場+4.7%)などインフレ・金利上昇の懸念を強める内容であった。
■加えて、「ノルドストリーム」への損傷により復旧見通しが立たないこと(27日)、ロシアがウクライナ東・南4州の併合への調印(30日)、イタリアへのガスプロム(ロシア)からのガス供給の停止(1日)、OPECプラスが4日の会合で日量100万バレルの減産を打ち出すとの報道(2日)、など不安材料には枚挙にいとまがない。
■4日(本日)の日本株は前日の米国市場の急騰(NYダウは2.66%高)を受けて上昇した。9月のISM製造業景況指数が50.9(8月は52.8)と予想外に低下したことによって、米国債利回りが低下したことによる。しかし、これでインフレ懸念が鎮静化するとは限らない。物価高とインフレが併存するスタグフレーション懸念が今後は台頭する可能性も考えられる。今週は、ISM非製造業景況指数(5日)、米雇用統計(7日)の発表が予定されており、発表内容で株価は上下に大きく振れる展開も予想される。
■日経平均株価のコンセンサスEPSは前週末の採用銘柄入替で全予想期間で40円程度のマイナスの影響が出た。この影響を除外すれば概ね前週比横ばいではあるものの、コンセンサスDI(前週比プラスとなった企業数の比率)はまだ明確ではないが低下局面に入ったようにも見て取れる。企業側が発表する業績修正(全市場)も下方修正が増えてきている。既にある程度の株価の調整が生じていることからみれば、短期で大幅に下げるとは考えられないが戻りは限定されそうだ。

 

 

 

◇日経平均妥当水準(レンジ)

26,369円~28,458円 (前回27,612円~29,766円)

「IFIS/TIWコンセンサス225」(9月30日)来期予想ベースEPSをもとに算出

◇IFIS/TIWコンセンサス225(9月30日)

今期予想EPS 1838.00 (前週1876.99円)
来期予想EPS 1829.08 (前週1869.37円)
再来期予想EPS 1974.98 (前週2017.24円)
今期予想PER 14.11 (前週14.47倍)
来期予想PER 14.18 (前週14.53倍)
再来期予想PER 13.13 (前週13.46倍)
来期予想PBR 1.04 (前週1.08倍)
来期予想ROE 7.32% 前週 7.41%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
6.98% (前週 6.99%)

9月30日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出

  

 

 

日経平均株価の妥当レンジは前週比で大幅に下落した。日経平均そのものが下落した影響もあるがそれ以上に大きかったのは採用銘柄の入替(採用:日本電産、除外:静岡銀行)だった。コンセンサス予想EPSはこの入替に伴って、各々の期間で約40円減少した。PERの高い銘柄への入替ではこうした現象も生ずる。今週も銘柄入れ替えがあるが、逆に予想EPSを増加させる方に動くかもしれない。

来期予想ベースのプラス企業比率は、 50.0%→60.149.752.6%→47.351.1%。
再来期予想ベースのプラス企業比率は、54.3%→59.1%→50.0%→49.054.2%→49.4
サンプル数は少ないが徐々に悪化傾向にあるように見える。

[注:例年4~5月は、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]

出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成

 

 

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り

 

株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。