9月9日妥当レンジ 28,108円~30,323円
9月FOMCでの0.75%利上げの織り込みは進んだが

2022/09/13

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

投資のポイント

<9月FOMC後に焦点は移りつつある>
■8月26日のジャクソンホールにおけるパウエルFRB議長の講演を機に、9月のFOMC(20-21日)での0.75%の利上げ見通しを市場は急速に織り込んでいる。6日にオーストラリアが0.5%、7日にカナダが0.75%、8日にECBが0.75%の利上げを発表したが、2日の終値から12日までの5営業日でダウ工業株30種平均は1062.9ドルの大幅な上昇となった。
■この間、FRB高官の発言も「物価上昇率が目標に向かっていると確信を得るまではしばらくの間、引き締め的である必要がある」(ブレイナード副議長・7日)、「来年の始めまでに政策金利を4%超に引き上げ、そこで維持する必要がある」「メスタークリーブランド連銀総裁・7日)、「再度の大幅引き上げを支持する」(ウォラー理事・9日)、など引き締め的な内容が続いており、0.75%利上げはほぼ織り込まれたと考えられる。13日に米消費者物価指数、14日に米生産者物価指数(いずれも8月)でのインフレ率低下が殆ど見られなかったとしても、市場の揺るぎは限定的にとどまるように思われる。
■筆者は、9月FOMCまでは利上げ織り込みから下押し圧力が強く、FOMC通過によって株価は上方に転換すると見ていたが、結果として想定以上に市場は速かったと言えそうだ。
■日本株は、サプライチェーンの回復、円安による輸出企業の業績へのプラス効果、水際対策の緩和見通しによるインバウンド効果から欧米株式市場よりも底堅く推移することが期待される。
■今後は、9月FOMC後を占う展開が予想される。一つのポイントは、9月FOMCで示されるドットチャートであろう。前回(6月)時点で示された政策金利(中間値)は22年末3.375%、23年末3.750%であり、引き上げは必至である。その水準によっては11月並び12月のFOMCで0.5%の引き上げも現実味を帯びる。
■二つ目のポイントが欧州をはじめとした世界経済の減速の影響であろう。目先的にはインフレ率の低下というプラス面に焦点が当たっているが、企業業績の悪化が現実化する過程と深度に視線が変わるタイミングを意識する必要があるだろう。市場センチメントが目まぐるしく変わる不安定な商状は今後も続くと考える。

 

 

 

◇日経平均妥当水準(レンジ)

28,108円~30,323円 (前回27,831円~29,992円)

「IFIS/TIWコンセンサス225」(9月9日)来期予想ベースEPSをもとに算出

◇IFIS/TIWコンセンサス225(9月9日)

今期予想EPS 1864.53 (前週1859.18円)
来期予想EPS 1869.40 (前週1868.29円)
再来期予想EPS 2017.53 (前週2016.36円)
今期予想PER 15.13 (前週14.87倍)
来期予想PER 15.09 (前週14.80倍)
再来期予想PER 13.98 (前週13.71倍)
来期予想PBR 1.12 (前週1.10倍)
来期予想ROE 7.39% 前週 7.41%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
6.86% (前週 6.93%)

9月9日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出

  

 

 

日経平均株価は妥当レンジ下限付近にある。コンセンサス予想EPSは短期的には供給制約の解消、円安による輸出企業の採算改善、インバウンド期待などから上向く傾向にあると考えられ、そのため妥当レンジそのものの上方へのシフトが見込まれ、株価もやや上向く可能性が考えられる。ただし、妥当レンジの上限に向けた位置取りの変化にはリスクプレミアムの改善(低下)が求められるだけに限定的と考える。

来期予想ベースのプラス企業比率は、 44.446.348.450.0%→60.149.7
再来期予想ベースのプラス企業比率は、44.251.9%→52.1%→54.3%→59.1%→50.0%。
方向感に乏しい展開。高水準な前週から一転して下降。

[注:例年4~5月は、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]

出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成

 

 

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り

 

株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。