7月22日妥当レンジ 28,938円~31,177円
悪材料織り込みも今後の経済指標と企業業績次第

2022/07/26

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

投資のポイント

<目先の利上げは織り込み済み、株式市場のレンジは幾分切りあがったが先行きの不透明感は強く上値は限定的と考える>
■21日発表の米新規失業保険申請件数(7/10-16週)は25.1万件と3週連続で増加し、約8カ月ぶりの高水準となった。22日にS&Pグローバルが発表した7月の購買担当者景気指数(PMI)は米国が▲4.8%ポイントの47.5、ユーロ圏が▲2.6ポイントの49.4といずれも好不況の分かれ目である50を下回った。こうした景況感の悪化を受けて、米10年国債利回りは一時2.73%まで低下し、ドル円は135円台までドル安・円高が進んだ。
■21日のECB理事会では市場の想定通り政策金利を(0.0%から)0.5%に引き上げた。ECBは同時に国債の買い入れ規模に制限を設けない「トランスミッション・プロテクション・インスツルメント(TPI)」を発表し、南欧諸国を念頭とした国債価格の急落に備える姿勢を示した。他方、20-21日の日銀金融政策決定会合において消費者物価上昇率の見通しを4月時点の1.9%から2.3%に引き上げたものの、政策の現状維持を決定した。欧米の景況感悪化と米国金利の低下を受けて、海外勢の買戻しから10年国債利回りも0.25%から0.2%を割り込む水準となっている。世界的にインフレ懸念からリセッション懸念に重心が移りつつあることが背景と考えられる。
■26-27日の米連邦公開市場委員会(FOMC)では、1.0%の利上げ予想は大きく後退しており、6月に続いて0.75%の利上げの可能性が高い。9月以降の利上げペース(利上げの停止時期等)に焦点が移るが、あくまでも今後の経済指標次第であり、FOMC後の記者会見ではパウエル議長は慎重な言い回しに終始すると思われる。
■インフレ(金利上昇)懸念が後退したことによって、株価水準のレンジは幾分切りあがった。現状では日経平均株価26,700円~28,900円のレンジを想定する。しかし、欧米ならびに中国の経済減速、終結の見えないロシア・ウクライナ戦争、欧州のガス供給問題など、問題は山積している。11月には米中間選挙を控えており、民主党が大敗する可能性も強い。WHOは「サル痘」に関して緊急事態を宣言した。やや先のことを置いておくならば、目先は企業業績への注目が強まるだろう。景気の影響を受けにくいIT・ハイテクに注目する。

 

 

 

◇日経平均妥当水準(レンジ)

28,938円~31,177円 (前回28,210円~30,394円)

「IFIS/TIWコンセンサス225」(7月22日)来期予想ベースEPSをもとに算出

◇IFIS/TIWコンセンサス225(7月22日)

今期予想EPS 1776.98 (前週1778.67円)
来期予想EPS 1890.30 (前週1888.99円)
再来期予想EPS 2043.37 (前週2044.11円)
今期予想PER 15.71 (前週15.06倍)
来期予想PER 14.77 (前週14.18倍)
再来期予想PER 13.66 (前週13.11倍)
来期予想PBR 1.14 (前週1.11倍)
来期予想ROE 7.75% 前週 7.80%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
7.18% (前週 7.29%)

7月22日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出

  

 

 

コンセンサス予想はまだ崩れる兆しはほとんど見られない。米長期金利の低下を受けて国債利回り(日本)も0.25%のイールド・カーブ・コントロールの上限から大きく低下。欧米のインフレと景気減速懸念はぬぐえないものの悪材料を一旦織り込んだことで妥当レンジはやや上方にシフト。

来期予想ベースのプラス企業比率は、 53.2%→53.8%→50.5%→57.0%→52.7%→46.1
再来期予想ベースのプラス企業比率は、53.0%→51.9%→49.555.4%→52.9%→53.8%。
今期・来期ベースが50%割れになったが、まだ底堅い(?)

[注:例年4~5月は、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]

出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成

 

 

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り

 

株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。