11月5日妥当レンジ 29,322円~31,670円
中国共産党6中全会で習近平体制の継続・強化が進む
【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】
投資のポイント
<利上げ懸念からの揺り戻しから米国株は一段高>
■米国株式市場は先週は利上げ懸念からの揺り戻しもあり、ダウ平均は週間で508ドル上昇し、過去最高値を更新した。
■米FOMC(11/2-3)においてはテーパリングの決定が行われ、事前予想通りに毎月150億ドルずつ8ヵ月にわたって買入縮小が行われることとなった。パウエル議長は「いまは利上げのときではない」と従来通りの発言であったことから市場に波乱は生じなかった。サプライズとなったのは4日の英イングランド銀行による政策金利の据え置き。ベイリー総裁がインフレ率の上昇を念頭に「行動しなければならない」と10月17日に発言していたことから市場では11月会合で利上げされるとの織り込みが進んでいた。5日発表の10月の米雇用統計では非農業部門雇用者数が9月分が19.4万人増から31.2万人増へと上方修正され、10月分も53.1万人増と市場予測(40万人程度)を大きく上回った。失業率は4.6%と前月から0.2ポイント改善したものの、労働参加率が高まらず(前月比横ばいの61.6%)、今後も人手不足が続くと見られている。
■5日に1兆ドルの米インフラ法案が下院で可決された(上院は可決済)。もう一つの看板政策である子育て支援等は1.75兆ドルに縮小されたが、まだ可決には至っていない。インフラ法案を人質に子育て支援を先行して可決させる計画であったが、バージニア州知事選挙での民主党敗北などから結果を急ぐことが求められられたものと思われる。直近のUSA Today/サフォーク大学の世論調査ではバイデン大統領の支持率は38%にまで低下している。来年の中間選挙では上院・下院ともに共和党への議会の逆転が生じる可能性が強まっている。
■7日発表の中国貿易統計(10月)では輸出が前年同月比27.1%の大幅増となったが、コスト高による輸出価格への転嫁によるものが大きく数量増は限定されている模様である。海外新規受注は弱く、価格転嫁も原材料高・電気料金上昇から見れば不十分との見方もある。
■今週は目立った経済指標の発表等は無いが、8日から4日間にわたって中国共産党の6中全会が開催され、「歴史決議」が採択され習近平体制の継続が確認される模様だ。
■米企業決算も一巡した今週は、一旦踊り場を予想する。
◇日経平均妥当水準(レンジ)
29,322円~31,670円 | (前回28,915円~31,262円) |
「IFIS/TIWコンセンサス225」(11月5日)来期予想ベースEPSをもとに算出
◇IFIS/TIWコンセンサス225(11月5日)
今期予想EPS | 1671.62円 | (前週1686.30円) |
来期予想EPS | 1772.04円 | (前週1771.85円) |
再来期予想EPS | 1842.84円 | (前週1849.71円) |
今期予想PER | 17.71倍 | (前週17.13倍) |
来期予想PER | 16.71倍 | (前週16.31倍) |
再来期予想PER | 16.07倍 | (前週15.62倍) |
来期予想PBR | 1.25倍 | (前週1.23倍) |
来期予想ROE | 7.48% | (前週 7.53%) |
来期予想 インプライド・リスク・プレミアム |
6.91% | (前週 6.98%) |
11月5日 日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出
米FOMCがテーパリングを決定したもののややハト派であったり、BOEの金融政策会合で今回は利上げが見送られたことなどから金利に対しては緩和的であり、米雇用統計の雇用数の増加が予想を上回ったことで景気回復に強気であったり、また米国企業業績が好調と株式市場には追い風が続いた。米国企業決算も一巡したことから、一旦は踊り場を迎えるか?
来期予想ベースのプラス企業比率は、 44.3%→51.1%→46.0%→52.5%→53.7%→57.5%。
再来期予想ベースのプラス企業比率は、44.8%→52.4%→44.4%→60.7%→58.3%→51.8%。
決算が本格化した時点では過去4四半期ほどの勢いはないものの比較的好調な出足。
[注:例年4~5月は、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]
出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2014年1月から表示
「IFIS/TIWコンセンサス225」について IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。 理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。 4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。 〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕 会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。 〔予想EPS増減社数〕 今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。 〔予想PBR(今期末)〕 前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。 〔予想ROE(来期ベース)〕 前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。 〔リスクプレミアム〕 特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り |