9月24日妥当レンジ 28,778円~31,114円
緊急事態宣言解除は既に織り込み済みか
【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】
投資のポイント
<金利上昇はじわじわと>
■先週は週初に中国恒大集団の資金繰り問題によって株価が大きく下落したが、(東京市場は23日休場であったが)22日、23日のNY市場が大きく反発したことから、24日の東京市場も大きく反発。週間の日経平均株価の下落幅は251円に留まった。NY市場が反発した理由はやや不明ではあるが、恒大集団への懸念が薄らいだというよりも、人民元の流動性確保のために中国の金融機関がドル売りに動いたことによって人民元の下落が生じなかったことや、米FOMC(21-22日)でのテーパリング決定を見込んで売りポジションにあった投資家が買い戻したことなどが挙げられている。
■21-22日の米FOMCでは、パウエル議長が記者会見で「早ければ次回11月の会合になる」とテーパリング年内開始を示唆した。これは市場予想通りであったが、テーパリングの終了時期を来年半ばと言及。市場が予想した1年程度の期間よりも8カ月程度と速いペースである。また、注目されたドットチャートにおいて、ゼロ金利を解除する時期を18人の参加者が現状維持と利上げで9対9と割れたものの中央値は22年と前回の予想よりも1年前倒しとなる、かなりの「タカ派」の内容であった。それにもかかわらず、米国株式市場が上昇したのは、22日の記者会見でパウエル議長が「テーパリングと利上げの判断は基準が異なる」と強調したこと。また参加者の内、現状維持としたハト派に議長をはじめとした投票権を持つ理事が多く含まれているとの市場の読みがあるようだ。
■とはいっても、米10年国債利回りは1.5%台に上昇。ここまでは市場が織り込んでいた水準と思われるが、さらなる上昇にはハイテク株など高バリュエーション銘柄に影響が及ぶ可能性があるだろう。中国恒大集団の動向を含めて中国の不動産価格下落の懸念も強い。天然ガスなど国際エネルギー価格の上昇もインフレ懸念から金利上昇圧力をもたらしそうだ。
■国内では緊急事態宣言が今月末をもって全面解除される見通しであり、消費回復には一定の効果が期待される。ただし、ここ数週間の感染者数の減少トレンドから既に織り込み済みの内容と言えよう。29日の自民党総裁選挙ではどの候補が勝っても材料一旦出尽くしとなる可能性には注意したい。
◇日経平均妥当水準(レンジ)
28,778円~31,114円 | (前回28,771円~31,106円) |
「IFIS/TIWコンセンサス225」(9月24日)来期予想ベースEPSをもとに算出
◇IFIS/TIWコンセンサス225(9月24日)
今期予想EPS | 1685.23円 | (前週1684.18円) |
来期予想EPS | 1763.69円 | (前週1763.04円) |
再来期予想EPS | 1845.75円 | (前週1844.56円) |
今期予想PER | 17.95倍 | (前週18.11倍) |
来期予想PER | 17.15倍 | (前週17.30倍) |
再来期予想PER | 16.39倍 | (前週16.54倍) |
来期予想PBR | 1.22倍 | (前週1.22倍) |
来期予想ROE | 7.13% | (前週 7.07%) |
来期予想 インプライド・リスク・プレミアム |
6.64% | (前週 6.59%) |
9月24日 日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出
先週は21日(火)・22日(水)と大きく下落したが、22日・23日のNY市場の反発を受けて24日(金)は3万円台を回復した。中国経済減速の可能性や欧米の金融緩和縮小の兆しから上値を見込みにくい展開か? 緊急事態宣言の解除も国内企業業績も上方修正余地は縮小傾向に入りつつあるようだ。
来期予想ベースのプラス企業比率は、 64.2%→61.3%→62.0%→48.5%→72.1%→44.3%。
再来期予想ベースのプラス企業比率は、63.2%→62.2%→61.9%→49.1%→67.4%→44.8%。
サンプル数は少ないものの、来期・再来期ともに再び50%割れ。変調の兆しか?
[注:例年4~5月は、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]
出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2014年1月から表示
「IFIS/TIWコンセンサス225」について IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。 理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。 4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。 〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕 会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。 〔予想EPS増減社数〕 今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。 〔予想PBR(今期末)〕 前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。 〔予想ROE(来期ベース)〕 前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。 〔リスクプレミアム〕 特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り |