9月3日妥当レンジ 28,173円~30,488円
感染者数ピークアウトから強気継続

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

投資のポイント 

<米国経済指標は弱かったが>
■8月31日発表の米コンファレンスボード消費者信頼感指数は113.8と前月より11.3ポイント低下し、6カ月ぶりの低水準となった。3日発表の米雇用統計では非農業部門雇用者数前月比が、7月分は94.3万人増から105.3万人増へと上方修正されたものの、8月分は23.5万人増と市場予想(72万人増)を大きく下回った。ISM製造業景気指数(1日発表)は予想外の上昇とはなったものの受注残が上昇しており供給障害が生じている可能性が指摘された。ISM非製造業景気指数(3日発表)は過去最高となった7月から減速した。
■米雇用統計の発表を受けて、市場ではFRBによる9月のテーパリング決定は無くなったとみて、ハイテク株を中心とするナスダックは上昇、3日に過去最高値を更新した。
■先週の日本株は米株市場の上昇トレンドを受けて週頭から上昇傾向にあったが、総選挙時には株は上昇するとの経験則、3日の菅首相の総裁選出馬見送り発表を受けて大幅高となった。週間で日経平均は1,486円の上昇であった。アフガン情勢の緊迫感の低下や新型コロナ感染者数が国内並びにグローバルでも目先のピークを打ったことも株高の要因であると考えられるだろう。週明けも先週からの流れを受け継いで7日午前中には日経平均株価が一時3万円を回復する局面もあった。

<コロナ終息が前提であるが>
■日経平均株価の3万円という水準は、ファンダメンタルからは妥当水準の範囲内である。インプライド・リスク・プレミアムからは米金利2%程度を織り込んだ水準であり、米国で今後、テーパリングが決定・開始されても影響は限定的と考えられる。
■国内の感染者数は先週に目先のピークをつけており、海外でも東南アジア諸国の感染者もピークを打ったものと思われる。そのため、足元で発表される8月分の経済指標が芳しくなくても反応薄になると考える。企業業績は好調であり、(全社発表ベースでの)上方修正が下方修正を上回る状態が続いている。アナリストコンセンサスも予想EPSのプラストレンドが継続しており、第2四半期決算発表(10月下旬から11月中旬)での上方修正期待から株式市場は強含みに推移するものと考える。押し目は積極的に臨みたい。

 

 

 

◇日経平均妥当水準(レンジ)

28,173円~30,488 (前回27,651円~28,599円)

「IFIS/TIWコンセンサス225」(9月3日)来期予想ベースEPSをもとに算出

◇IFIS/TIWコンセンサス225(9月3日)

今期予想EPS 1708.76 (前週1743.23円)
来期予想EPS 1770.46 (前週1785.19円)
再来期予想EPS 1854.31 (前週1863.69円)
今期予想PER 17.05 (前週15.86倍)
来期予想PER 16.45 (前週15.48倍)
再来期予想PER 15.71 (前週14.83倍)
来期予想PBR 1.17 (前週1.12倍)
来期予想ROE 7.13% 前週 7.26%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
6.75% (前週 6.97%)

9月3日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出

  

 

 

日経平均株価は週間で前週末比+1,486.97円と大幅に上昇。妥当レンジも切りあがったが、レンジ下限近辺から中位水準に。コンセンサスDIのプラス比率は60%台が続いており、強含みのトレンドはまだ続きそうだ。国内は緊急事態宣言の延長の可能性もあるが、東京都の感染者数の減少トレンドが継続しており、景況感回復への明るさがうかがえる。

 

来期予想ベースのプラス企業比率は、58.6%→47.462.061.564.261.362.0
再来期予想ベースのプラス企業比率は、54.7%→43.657.8%→62.763.262.261.9
コンセンサスEPSの絶対額は特定銘柄(ソフトバンクG)の影響からマイナスとなったが、コンセンサスDIの高いプラス比率が継続しており、株価水準が切りあがった感がある。

[注:例年4~5月は、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]

出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2014年1月から表示

 

 

 

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り

 

株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。