6月11日妥当レンジ 25,500円~27,700円
米FOMCを控え様子見ムード継続、下落局面あらば強気で
【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】
投資のポイント
<様子見ムードから株価の“凪”状態が続く>
■先週(6/7-11)の日経平均株価は、1日の変動幅が最大でも▲100.76円(6/9)に留まる凪状態にあり、週末終値で前週比7.21円と小幅な動きであった。10日発表の米消費者物価を前に様子見ムードが続き、発表後も利益確定の上値の重い展開となった。
■6月11日時点の日経平均株価のコンセンサス予想EPSは、今期はプラスであったが、来期・再来期ベースではマイナスであったが、いずれも小幅な変化に留まった。コンセンサスDI(前週比プラスとなった企業の比率)はプラス比率は50%を上回ったものの、高い水準にあった前の週からは大きく低下した。ただし、長期金利(国内10年国債利回り)の低下からインプライド・リスク・プレミアムを6.0%とした時の参考理論値は小幅に上昇した。
<米CPIは前年同月比5.0%の上昇も長期金利は低下>
■10日発表された5月の米消費者物価(CPI)は、前年同月比5.0%と4月(4.2%)から0.8ポイント上昇したものの、中古車価格の上昇が前年同月比29.7%という特殊事情もあったことから、米長期金利は一時的に上昇したが、1.4%台へと逆に低下した。FRBがインフレ懸念への牽制を強めていることから6月のFOMC(15-16日)においてテーパリングの検討開始を宣言することは無いとの見方が強まっている。さらに、米国金利の中期的な上限に対する見解が下方に傾いていることや、日本国債がゼロ金利に張り付いた日本勢が米国債の購入を強めているとの観測もある。10日のECB理事会でも金融緩和の維持が決定され、債権の購入ペースも月800億ユーロが継続されることとなった。
■今週は、15日:米生産者物価、米小売売上高、米鉱工業生産、16日:米住宅着工件数(いずれも5月分)の発表に加え、米FOMC(15-16日)、日銀金融政策決定会合(17-18日)の予定。引き続き、様子見ムードの強い市場展開を予想するが、米VIX指数、日経ボラティリティ指数などが低下しており、変動に対するエネルギーが蓄積されつつあるようにも感じられる。ただ、日本株は金利上昇をある程度織り込んだ水準にあることから株価が下ブレするのであれば買いの好機と考えている。
◇日経平均妥当水準(レンジ)
25,500円~27,700円 | (前回25,500円~27,600円) |
「IFIS/TIWコンセンサス225」(6月11日)来期予想ベースEPSをもとに算出
◇IFIS/TIWコンセンサス225(6月11日)
今期予想EPS | 1551.12円 | (前週1546.72円) |
来期予想EPS | 1676.30円 | (前週1678.20円) |
再来期予想EPS | 1761.43円 | (前週1765.74円) |
今期予想PER | 18.66倍 | (前週18.71倍) |
来期予想PER | 17.27倍 | (前週17.25倍) |
再来期予想PER | 16.43倍 | (前週16.39倍) |
来期予想PBR | 1.19倍 | (前週1.20倍) |
来期予想ROE | 6.88% | (前週 6.94%) |
来期予想 インプライド・リスク・プレミアム |
6.48% | (前週 6.47%) |
6月11日 日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出
引き続き、米長期金利の緩やかな上昇を織り込む過程にあると考える。
参考値(ERP=エクイティ・リスク・プレミアム 6.0%)の日経平均株価(6/11現在)は 31,400円(前週比+50円)。 再来期予想ベースでERP 6.0%(現在価値への割戻しなし)の場合の理論値は32,100円(前週比+50円)。
来期予想ベースのプラス企業比率は、 82.1%→65.2%→48.9%→56.1%→52.1%。
再来期予想ベースのプラス企業比率は、65.7%→60.2%→53.0%→61.7%→51.2%。
プラス比率は緩慢になりつも50%をキープ。
[注:例年4~5月は、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]
日経平均株価は、インプライド・リスク・プレミアム6.0%の理論価格を下回っており、割高感の解消が進みつつある。
日経ボラティリティ指数は6/11現在は17.93と低下(コロナ後の最低は4/9の17.05)している。凪の状態からは上昇しやすく、その場合は株価が下落するリスクも高いが、(その場合でも)株価水準の割高感は解消に向かっており、株価の下ブレは限定的と考える。
出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2014年1月から表示
「IFIS/TIWコンセンサス225」について IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。 理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。 4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。 〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕 会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。 〔予想EPS増減社数〕 今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。 〔予想PBR(今期末)〕 前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。 〔予想ROE(来期ベース)〕 前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。 〔リスクプレミアム〕 特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り |