5月21日妥当レンジ 25,000円~27,100円
緊急事態宣言の延長とオリンピックの是非に揺れる

2021/05/25

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

投資のポイント 

<コンセンサス予想は着実に伸びる>
■5月21日時点の日経平均株価のコンセンサス予想EPSは、今期(21年度)1617.71円、来期(22年度)1724.27円、再来期(23年度)1773.31円。1週間前からそれぞれ+17.93円、+9.55円、+9.48円と増加した。今期、来期に関しては、3月26日時点(その時点では来期・再来期)の1475.91円、1598.87円を大幅に上回っている。コンセンサス予想EPSの緩やかな増加傾向はまだ数週間は続く可能性もある。
■他方で米長期金利は、「インフレが上昇するような展開になっても、現状のインフレ率に深く影響を及ぼすことは想定されない」(ブレイナード理事)といったFRB高官による発言などから1.60%に低下。インフレ懸念の後退から米国株は強含みに推移している。こうした環境から日本株も底堅い展開が予想される。
■グローバルでの感染者数はインドを除けば減少傾向が顕著であり、世界的な景気回復が意識されている。インフレ懸念に関しては当面は経済指標発表で一時的に再燃する可能性はあるものの、織り込みが進みつつあるものと考えられる。
■ただし、日本国内の新型コロナの感染者数は増加傾向にあり、5月31日を期限としていた9つの都道府県での緊急事態宣言の延長が意識されている。飲食や旅行など内需関連企業の業績はさらに厳しい状況が訪れそうだ。
■米国務省は24日に日本への渡航を警戒レベル(4段階)を最高に引き上げ、米国民に日本への渡航を中止するよう勧告した。これにより開催まで2ヵ月と迫った東京オリンピックの中止議論強まる可能性がある。東京オリンピックは経済効果が限定されることに加えて、変異株の感染拡大リスクを強めるだけにむしろ中止された方が株価にはプラスとの見方もある。
■オリンピックが中止(または延期)となれば、オリンピックのためと揶揄される緊急事態宣言の必要も薄らぐかもしれない。オリンピック中止はむしろ内需関連の上昇の切っ掛けになるかもしれない。

 

◇日経平均妥当水準(レンジ)

25,000円~27,100 (前回24,900円~26,900円)

「IFIS/TIWコンセンサス225」(5月21日)来期予想ベースEPSをもとに算出

◇IFIS/TIWコンセンサス225(5月21日)

今期予想EPS 1617.71 (前週1599.78円)
来期予想EPS 1724.27 (前週1714.72円)
再来期予想EPS 1773.31 (前週1763.83円)
今期予想PER 17.56 (前週17.56倍)
来期予想PER 16.42 (前週16.38倍)
再来期予想PER 15.97 (前週15.92倍)
来期予想PBR 1.16 (前週1.16倍)
来期予想ROE 7.04% 前週 7.06%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
6.65% (前週 6.67%)

5月21日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出

  

 

 


参考値(ERP=エクイティ・リスク・プレミアム 6.0%)の日経平均株価(5/21現在)は 31,500円(前週比+150円)。 再来期予想ベースでERP 6.0%(現在価値への割戻しなし)の場合の理論値は31,500円(前週比+200円)。

 


来期予想ベースのプラス企業比率は、 60.668.859.5%→82.165.2
再来期予想ベースのプラス企業比率は、61.757.9%→51.6%→65.760.2
決算発表後も高水準維持。

[注:例年4~5月は、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]


予想EPSの上昇によって、予想PER18倍割れまで低下。

 


再来期は伸び悩みつつも増加傾向。

 

出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2014年1月から表示

 

 

 

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り

 

株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
TIWマガジン「投資の眼」   株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。

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