3月19日妥当レンジ 24,500円~26,400円
想定外により当面は一進一退だがトレンド変換ではない
【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】
投資のポイント
<“想定外”続く>
■先週は、日米の中央銀行の金融政策に高い注目が集まった。米FOMC(連邦公開市場委員会:16-17日)においては、FFレート誘導目標レンジ据え置き、資産購入継続、フォワードガイダンスの維持が決定されるともに、少なくとも23年末まではゼロ金利政策を維持することが表明された。これを受けて、17日の米ダウ工業株30種平均は過去最高値を更新、18日の日経平均株価は3万円台を回復した。しかしながら、18日(日本時間深夜)に米長期金利が1.75%にまで上昇したことや、19日の日銀金融政策決定会合において、ETF買入れに関して日経平均連動型を除外し、全てTOPIX連動型にする方針が決定されたことから日経平均株価は大幅下落となった(TOPIXは小幅上昇)。日銀金融政策決定会合では他に、長期金利の変動幅を0.2%→0.25%へと広げること、ETFならびにREITの購入上限額は維持するものの購入額の目安は撤廃された。また、急な利下げ局面において金融機関が日銀におく当座預金に上乗せ金利をつける「貸出促進付利制度」が創設された。
■19日にFRBは、「補完的レバレッジ比率(SLR)」の緩和処置を延長しないことを発表した。SLRはリーマンショック後に投融資などリスク資産の計上を制限するために導入された制度であるが、20年4月から1年間は特例で緩和されていた。緩和撤廃は米国債の保有削減等から金利上昇を招くとして、この3月末の期限延長が望まれていた。さらに、19日にはルネサスエレクトロニクスの工場火災が発生、自動車向け半導体の供給不足が懸念されている。週明け22日の日経平均は大幅続落となり、2営業日で1,000円超の下落幅となった。
<当面は、一進一退の展開か?>
■米長期金利の動向には、市場では6月頃にテーパリング(買入れ縮小)の議論が出てくるとの見方もあり、今後も市場を揺るがす要因として注意を払う必要がある。半導体供給の問題は、自動車減産の規模が確定すれば(一時的なショックはあっても)織り込み済みとなるだろう。日経平均連動型ETF除外に関しては、次頁に詳しく述べたが、一過性の問題と考えている。ただし、当面はネガティブサプライズから市場センチメントは悪化しており、一進一退の展開が続くと考える。
◇日経平均妥当水準(レンジ)
26,400円~24,500円 | (前回24,200円~26,100円) |
「IFIS/TIWコンセンサス225」(3月19日)来期予想ベースEPSをもとに算出
◇IFIS/TIWコンセンサス225(3月19日)
今期予想EPS | 1328.87円 | (前週1325.02円) |
来期予想EPS | 1472.65円 | (前週1492.91円) |
再来期予想EPS | 1596.66円 | (前週1604.44円) |
今期予想PER | 22.42倍 | (前週22.43倍) |
来期予想PER | 20.23倍 | (前週19.91倍) |
再来期予想PER | 18.66倍 | (前週18.52倍) |
来期予想PBR | 1.31倍 | (前週1.28倍) |
来期予想ROE | 6.47% | (前週 6.44%) |
来期予想 インプライド・リスク・プレミアム |
5.81% | (前週 5.81%) |
3月19日 日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出
日銀のETF買い入れ開始は2010年12月より。その時点でのNT倍率は11.5倍前後であった。週末値でのNT倍率は、21年2月19日に過去最高の15.56倍まで拡大した。
日銀が日経平均連動型のETF買入の中止を発表する前日(3月18日)のNT倍率は15.04倍であった。
もし、仮にNT倍率が日銀のETF買い入れ開始前にまで戻るとするならば、(3月18日を基準にTOPIXを固定と置けば)日経平均株価は▲23.5%の下落となる。
18日の終値(30,216.75円)を基準とするならば、23,105円となる。
しかし、PER(予想)、PBR(実績)で日経平均とTOPIX(東証1部)を比較した場合には、日経平均には割高感は無い。PER、PBRともにTOPIXが日経平均をやや上回る水準にある。
それにも関わらず、NT倍率が上昇を続けてきた理由は、日経平均のほうが東証1部全体よりもEPS成長率が上回っていたことによる。
株価指標から見る限りは、TOPIX(東証1部全体)が大きな下落を生じない限りは、日経平均だけが大幅に下落する展開は考え難い。現在の日経平均の大幅な下落は短期筋の売りやファンドのリバランス等による一時的な調整と考える。
調整後の適正な水準はなんともいえないが、NT倍率は14倍を下回る可能性は低いと考える(22日現在は14.65倍)。
参考値(ERP=エクイティ・リスク・プレミアム 6.0%)の日経平均株価(3/19現在)は 28,700円(前週比+200円)。 再来期予想ベースでERP 6.0%(現在価値への割戻しなし)の場合の理論値は30,450円(前週比+300円)。
来期予想ベースのプラス企業比率は、 64.0%→75.2%→60.4%→59.1%→51.6%。
再来期予想ベースのプラス企業比率は、61.4%→68.8%→59.1%→63.7%→60.0%。
コンセンサス予想は、増加傾向が続くがやや弱まってきた。
[注:例年4~5月は、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]
出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2014年1月から表示
「IFIS/TIWコンセンサス225」について IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。 理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。 4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。 〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕 会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。 〔予想EPS増減社数〕 今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。 〔予想PBR(今期末)〕 前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。 〔予想ROE(来期ベース)〕 前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。 〔リスクプレミアム〕 特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り |