12月4日妥当レンジ 21,200円~22,900円
好材料は12月中旬で一旦出尽くし、波乱含みか?

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

投資のポイント 

<感染者・死者は12月も大きく増加>
■11月下旬から新型コロナウイルス感染による死者数が1万人を超える日が続いている。12月は新規感染者数・死者数ともに11月を大きく上回ることが推察される。こうした中、経済統計にも影響が表れつつある。
■11月分の米ISM製造業景気指数(1日)は57.5(前月59.3)、 ISM非製造業指数(3日)は55.9(前月56.6)と悪化した。米雇用統計(4日)においては、失業率は6.7%(前月6.9%と改善したが、非農業部門雇用者数の増加は24.5万人と前月(61.0万人)・市場予測(46.9万人)ともに大きく下回った。
■ただ、こうした指標の悪化は或る程度は織り込み済みであったことや、超党派による9,080億ドルのコロナ対策費にバイデン氏が支持を示したこと、雇用統計の悪化は追加経済対策の成立を後押しするといった見方、などからNYダウ30種平均は4日に過去最高値を更新した。
■今週は10日のECB理事会が注目される。金融政策の「再調整」として、資産購入の特別枠(PEPP)の期限延長ならびに総額の上積み、ECBが銀行に超低利で資金を貸出す制度(TLTRO)の拡充案も取り沙汰されている。来週、15-16日の米FOMCでは、「資産の購入ペースの増額」または「購入国債の年限長期化」が採用される可能性が指摘されている。
■現在の株高を齎しているのは、米欧の追加緩和、バイデン氏の掲げる積極財政への期待、ワクチンの実用化によるコロナ禍の沈静化期待と考えられる。期待を市場は先取りしていると思われることや、共和党が上院を制することでバイデン氏は大型の経済対策が実施できるのか、ワクチンに関しても供給体制、副作用の可能性、効果の持続性など、不確定要素はリスクとして考慮されていないようにも思われる。
■日本株に関しては、再来期の業績回復を既に織り込んだ水準にあるが、米欧の金融緩和による為替変動(円高)の可能性や、国内での感染拡大による自粛強化の影響等も懸念される。本日(8日)発表の11月の景気ウォッチャー調査では現状判断DIが45.6(前月54.5)、先行き判断DIが36.5(同49.1)と急低下している。一本調子の上昇の反動が生じやすい状況も考えられ、波乱含みの展開がありそうだ。

 

 

◇日経平均妥当水準(レンジ)

21,200円~22,900 (前回21,300円~23,000円)

*「IFIS/TIWコンセンサス225」(12月4日)来期予想ベースEPSをもとに算出

◇IFIS/TIWコンセンサス225(12月4日)

今期予想EPS 1086.68 (前週1074.57円)
来期予想EPS 1298.97 (前週1294.76円)
再来期予想EPS 1484.81 (前週1478.82円)
今期予想PER 24.62 (前週24.80倍)
来期予想PER 20.59 (前週20.58倍)
再来期予想PER 18.02 (前週18.02倍)
来期予想PBR 1.15 (前週1.17倍)
来期予想ROE 5.58% 前週 5.67%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
5.25% (前週 5.29%)

12月4日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出

  

参考値(ERP=エクイティ・リスク・プレミアム 6.0%)の日経平均株価(12/4現在)は 25,000円(前週比▲100円)。 再来期予想ベースでERP 6.0%(現在価値への割戻しなし)の場合の理論値は26,300円であり、ここらが上限付近なのかもしれない。

来期予想ベースのプラス企業比率は、 52.6%→58.0%→56.8%→58.7%→57.3%。
再来期予想ベースのプラス企業比率は、51.9%→64.659.4%→63.455.3%。
5週連続で全期間50%超、来期ベースでは9
週連続。トレンドはまだ続きそうだ。

[注:例年4~5月は、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]
出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2014年1月から表示

 

 

 

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り

 

株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。